スケベな身体の四十路ババアはハードコアAVに出ろ!?-10
梶谷に支えられたまま、事務所のあるビルに入る朱代。
「……勘弁して下さい。俺もこんな真似はしたくなかったんです。大谷の野郎にまんまとハメられて、姐さんを陥れる片棒担がされたんです」
当の大谷が近くにいないせいか、梶谷の態度は一変していた。
朱代のよく知る、夫・五条勘治の側近としての梶谷がそこにはいた。
「ハメられたって、一体……」
「帝龍会の奴ら、人の面被った鬼です。女房と娘が人質に取られて……言うことを聞かなかったら、シャブ漬けにして生きたまま生皮を剥ぐと脅されたんです」
朱代は息を呑んだ。
あれだけ騒ぎ立てていたマスコミ陣が表からいなくなり、ビル内のエレベーターホールは森閑としていた。
朱代と梶谷しかいない空間だ。
ここでしか話せないことが、梶谷にはあるようだった。
「肉親が殺されようと、盃の重さには敵わない。それくらいのことは承知してます。例え由梨絵と凛子が目の前で殺されても、渡世の上での親である姐さんを売るような真似しちゃいけねえんだって分かってはいても……」
妻子の名を口にして感情が噴出したのか、梶谷は顔を真っ赤にして涙ぐみ、嗚咽していた。
「そ、そうだったのかい……」
朱代も声を震わせた。
もちろん、梶谷の結婚は五条夫婦が仲人となって盛大に執り行ったものである。
梶谷が盲腸で入院した病院に勤めていた女医の由梨絵を見初め、口説き落とした経緯もよく知っている。
よき極道の女房になって梶谷を支える由梨絵、そして二人の間に生まれた一人娘の凛子のことも、朱代は実の家族同様に思い接してきた。
梶谷が苦しんでいることは、朱代にとっても他人事とは思えないのだった。
「そんな訳があったなんて。……いいんだよ、お前は間違っちゃいない。渡世の親と、血を分けた子を天秤にかけたらどっちに傾くかなんて、あたしにだって分かるよ」
「姐さん……」
梶谷の声は嘆き震え、かすれていた。