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あたしのYANG KEY
【コメディ 恋愛小説】

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あたしのYANG KEY-1

「んなああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ヤッバイ、ヤッバイ、真面目にヤバイよーっ!転校初日で遅刻ってどうなのよ!?第一印象最悪じゃんよ!?ただでさえ微妙な時期なのによ!!
「母!はーはー!!何で起こしてくんないの!?」
あたしは階段の手摺りを滑り台のようにして降りながら叫んだ。新築の匂いがする家にあたしの声が虚しく響く。
「ちょっと母?シカト?聞いてん…」
ねぇねぇ、今、母いないんじゃない?とか思ったっしょ。なら、まだマシだっつぅの。リビングの扉を勢い良く開けたあたしの目に飛び込んできたものは…誰もいない空間でも、『仕事でしばらく帰りません』的な置き手紙でもなく…
「母ぁっ!!寝てんじゃねぇーっ」
涎垂らして気持ち良さそうにソファに寝てる母。ありえねぇよ、オイ…。
「…あぁ、ヨリ〜、おはよう♪」
「んなこと言ってる場合じゃないよ!遅刻だよ、遅刻!!お弁当はっ?」
母は眠い目を擦りながらフラァ〜ンと起き上がる。
「今から作るねぇ〜」
「遅ぇっ!」
とにかく…とにかく急がなきゃ!!ってことでさ、暇つぶしにあたしのことでも知っておいて!!


あたしは結城頼香、高3である。自己分析をすると、『元気』『明朗』『前向き』の三冠王でございあす。楽しい事が大好きで、誰とでも気軽に話せるし、病気知らず!の18年間アパート暮しを送ってきた。そんなある日、父が信じられないコトを言いだした。
「ヨリぃ、母ぁ、家買ってきたよー」
「はぁあっ!?」
「あらぁ、いくらだったの?」
「3500万円也♪」
「本当ぉ?良かったわねぇ♪」
「家族に内緒ででけぇ買い物してんなよ!」
「そんなワイルドなダーリン素敵!」
「わかっているさ、マイハニー♪」
「一生やってろ!」
てな訳で、父と母が新築を建てたので、あたしたちはこの街に三日前に引っ越してきた。前の学校の友達と離れるのは辛かったけど、でも大丈夫!見て、携帯の待ち受け。クラス皆の写真なんだ。それにお別れメールだって全部保護してるし…。これで少しは寂しさも紛れるでしょ。


とか何とかしてる間にあたしはNEW学校の前に。自転車小屋に自転車を置いてハッとする。…誰もいない…。慌てて携帯の時計を見るとデジタルな文字で『7:06』と表示されていた。
やっちまった…出たよ、あたしの早とちり。ごめんね、母…。くぅ…無念。でも、先生ぐらいはいるだろう。あたしは職員玄関から校舎内に入って、持ってきていた内履きに履きかえる。脱いだローファーをビニール袋に入れると、すぐ目の前にある職員室の扉を開けた。
「失礼します…」
「はい?」
出てきたのは30代ぐらいで銀渕の眼鏡を掛け、髪を七三分けにしたいかにも「優等生ラブ」みたいな男の先生だった。
「あの、私…今日からこの学校に通う結城頼香といいます」
「あぁ、結城さんですね?私が担任の伊藤です」
伊藤先生はにっこり微笑んだ。その笑顔があまりにも優しすぎて、『うっわぁ、インテリくさいおっさんだなぁ。あたしの嫌いなタイプだわ』と思ってた自分に罪悪感を感じた。
「さて…随分早く来ましたね」
「はい、新しい学校が気になってしょうがなかったので」
真っ赤な嘘です。自分の不注意で間違えて一時間早く来てしまったなんて、言えませんでしょう?
「そうですか。遅れられるより、ましです。早めの行動は良いことですよ」
「あ、ありがとうございます…」
睡眠時間少なくなったけど、まぁ、結果オーライっていうことで!
「では…校内を案内しましょうか。大分時間もあるみたいですし…ついてきてください」
「はい」


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