1:1:1〜佐々成将〜-5
「え……?」
俺は驚きのあまりそれ以上声が出なかった。
学祭一日目の朝。
午前中は早将が店番だったので、佐和と二人で学内を回っていたときのこと。
目の前に居るのは顔を真っ赤にしてスネる佐和。
「……本当に気付いてなかったの?あたしの気持ち…」
佐和は俺の手を引いて人気のない場所へ連れてきた。
さっき佐和が言った言葉が、頭の中でぐるぐる回る。
『あたし、成のこと好きだから』
俺の胸が複雑に音を奏でる。
ズキン…?
ドキン…?
なんとも表現しがたい思いを胸に秘め、俺は台詞を考える。
「成…速答しないって事は期待してもいいの?」
今日は誰も立ち寄らないであろう社会科資料室に、俺を閉じ込めるように佐和が後ろ手で戸を閉めた。
佐和の言葉と態度に俺はゴクリと生唾を飲んだ。
答えなければ…
『困る』って
『早将が告る』って
『だから気持ちは受け取れない』って
混乱する考えの中で、何か矛盾に気が付いてふと我に返った。
早が居るから断るのか?
じゃあ早が居なかったら?
俺は自分の胸の秘められた想いに、たった今気付き言葉を無くした。
ゆっくりと歩み寄ってくる佐和を見つめながら、俺は言葉を探した。