愛人-1
少女は大樹の陰でじっと息を潜めて男を見ていた。いや、もしかしたら、鬱蒼と茂った樹木のあいだに射してきた光を見ていたのか、それとも遠くから響いてくる森の雫の音に耳をすましていたのか……。
水色のワンピースを着た少女の長い髪が微かな風になびく。可憐な白い首筋、ゆるやかに輪郭を描いた胸の膨らみ、すらりと伸びたカモシカのような脚。上半身裸になって黙々と木片に斧を振り下ろしていた男の胸の鼓動が少しずつ高まってくる。まさか、森のなかにこんな少女がやってくるとは思わなかった。まわりには誰もいなかった。斧を持つ男の手に汗が滲みはじめていた。
ふつふつと湧きあがってくる欲望。それは男にとって信じられないほどの欲望だった。男が不意に少女の方を振り向くと、すでに彼女は樹木の陰から消えていた。男は斧を置くと樹木の小枝をかき分け、少女を探しながらゆっくり森の中を歩いていく。生い茂った草が足に絡み、かさかさと音がした。
いた‥…少女の背中が見えた。彼女は男に気がつかないのか、そびえたつ大樹をまぶしそうに仰いでいた。男は息をひそめ、ゆっくりと少女の背後に忍び寄る。そして、次の瞬間、立ちすくんでいた少女の背後から彼女を腕の中に捕らえ、草むらに押し倒した。少女の白い腿が露わになり、彼の腕の中でもがく彼女の衣服が乱れた。
そのとき、森のどこかで雫が弾けるような音がした……。