世界崩壊。-1
愛してます。
ずっと言えなかった言葉だ。
今日僕は君に別れを告げられた。
世界が崩壊した。
そう僕の心の中が……
世界は権力者の汚い抗争と無関心な生きる屍の無力さによって滅亡を迎える。
街はビルは道路は……
全てが瓦礫に、灰になった。
滅び逝く街と死体。
破壊神はそれでも止まなかった。
テレビのニュースはいつのまにか途絶え一面砂嵐に。昨日まで当たり前に在ったものが砂と化した。
紙幣は意味と価値を無くし生き残った人々は生存をかけて殺しあいを始める。
他者を蹴落とすことで繋がる命。
本能と自己防衛だけが正義であり指針とされた。
戦災は異常気象までも引き起こし、人々は次第に明日への渇望をしなくなった。そもそも渇望なんて言葉さえ忘れてしまったようだ。黒い雨が降り続き植物の生態系は打ち砕かれて食糧難に飢える子供たち。
戰犯者たちはこの現状を予期して死神が首を刈って回るような末路を望んでスイッチを押したのだろうか。
世界が傷み始めた。
大地の呻きも水流の怒りも彼らは知らない。
ついに最期の兵器が打ち上げられた。
人々は黒ずんだ天空から墜ちる破壊神に目をやった。地面に突き刺さった破壊神は爆風と大地の振動と共に大気に死の風を撒き散らした。
空気は澱み、バタバタと人が倒れていく。
愛してます。
この時代には不必要な言葉になった。
愛で救われる筈がない。
人々はそう確信した。
愛の入り込める隙間などすでになかった。
時間の定めも失われて今が何時なのかはまったくわからなくなってしまった。
明治以前の時を捕らえなかった時代はこんなだったのかと苦笑する。
破壊神は尚も人々の命と生きる糧を奪い続け
彼の怒りが静まったのは長い月日を経てからだった。その頃には殆どの生物が死滅して静寂と混沌だけがこの星の住人となった。
日常が
すべて在ることの当たり前に馴れ親しんでいたものが一瞬にして無くなる。
壊れる。
簡単に獲たものは失いやすく、失ったものを取り戻す事は難しい。
人は過ちを犯し続けてきた。
気付くこともなく、
立ち止まることすらなく。
突然君に別れを告げられた僕の心はこんな風に砕けちり崩壊した。
君も当たり前じゃなかった。
今までの当たり前がガラガラと音を立てて崩れていく。
淋しいよ。
声が聞きたいよ。
と弱い自分が叫んでいた。
気を紛らわせようと読む雑誌も携帯もうわの空で何も入っていかない。
そう君がいないから。
人は当たり前と簡単に思っているけど、宝物を沢山もっている。