夫 雅樹との世界 4 夫の変化 新しい世界への序章-1
「今の生活から卒業する?
つまりはそれって、別れようっていうことなの?」
芽衣は雅樹の顔をにらみつけるように言った。
しかし、ほどなくして雅樹から目をそらすと、力なく言った。
「そうよね。離婚されても仕方ないわね。
さっき話したように、わたしにはあなた以外の男がいる。
その男と外で会い、当然身体の関係も持っている。
そんな妻が夫から別れを切り出されても、むしろ当然だわ。」
芽衣はそう言うと静かに立ち上がった。
「どこへ行くつもりだい?
また、荷物をまとめてくるなんて言うんじゃないだろうね。」
「じゃあどうすればいいの?」
「芽衣。そこに座って。落ち着いてぼくの話を最後まで聞いてくれないか。」
雅樹は芽衣の肩にやさしく手をおいで、自分の方へ引きよせた。
「ぼくが卒業しようと言っているのは、
お互いに【隠し事】をする生活から卒業して、
何でもオープンにしていこうっていうことなんだ。」
雅樹の言葉の意味がよく理解できない芽衣は、
顔を上げ、雅樹の顔を黙ったまま見つめた。
「芽衣だけじゃない。
ぼくにも、君に黙って付き合っている女性がいる。」
「そのくらい気づいてるわ。
あなたが何年も前から入社したての女の子と付き合っているっていうことくらい。」
「だったら、話は早い。
そうしたことをお互いに隠しているから、
ぼくたち夫婦の関係が窮屈、と言うかギクシャクと言うか、
互いに勝手に思い込んで誤解して、
言い争うことになるんじゃないかって思うんだ。だからね。」
雅樹は、そこで一度話を切ると、
自分のスマフォを持ってきた。
「見てごらん。」
しばらくスマフォをいじっていた雅樹は、
そのスマフォを芽衣の前に差し出した。
そこには裸の雅樹と、その雅樹のペニスを咥え、
嬉しそうにポーズをとっている、やはり全裸の若い女性が映っていた。
芽衣は驚きながらも次の写真を見た。
画面いっぱいにこれもまた若い女性が雅樹にバックからされている様子が映っていた。
(自撮り?そんな趣味、あったのから。)
複雑な思いでさらにページをスクロールする。
次の写真は雅樹の体の上に跨った先ほどの女性が、
自分の胸をもみながらカメラの方を見ている写真だった。
(鏡にでも映してとっているのかしら。)
明らかに、夫の浮気写真でありながら、
芽衣には不思議と怒りは沸いてこなかった。
雅樹に若い女性がいるということは、ずいぶん前から知っていた。
裏切られたというよりも、寂しい気持ちだった。
その寂しさは、雅樹には自分の知らない世界が有るのだという寂しさだった。
自分の知らないところで、自分の知らない相手と、
自分の大好きな雅樹が楽しい時間を過ごしているのだ。
自分だけ置いて行かれたような、そんな寂しさだった。
その寂しさを紛らわすために、芽衣も、
雅樹との結婚後はずっと控えてきたほかの男とのかかわりを復活させたのだった。
(雅樹が、わたしの知らないところで楽しんでいるのなら、
わたしも雅樹の知らないところで楽しんでやる。
雅樹も、わたしと同じような寂しさを感じればいいんだわ。)
それが始まりのきっかけではあったが、
もともとセックスそのものへの欲求が強かった芽衣は、
頻繁に相手を代え、常に新鮮な快楽を求めていたのだった。
悠一のような、自分の息子と年の違わない若い男性を相手にするようになったのも、
そんな理由からだった。
スマフォの画面から目を離し、
ボーっとしている芽衣に雅樹が声をかけた。
「見るのが嫌なら見なくてもいい。話を先に進めるから。」
芽衣はハッとして雅樹の顔を見た。
怒っている様子はない。いつもの優しい雅樹のまなざしだった。
「別にいやじゃないわ。」
そう言って、芽衣は再びスマフォの画面に目をやった。
次の写真を見て、芽衣はあることに気づいた。
(もう一人、いる。。)
そう。芽衣が見ていた写真は、
雅樹と若い女性との自撮り写真ではなかった。
明らかにカメラマン役がいる。
その証拠に、ベッドのシーツには、
部屋の明かりが作り出したもう一人の影が映っていた。
(これって、、、3P?)
少しだけ雅樹に目をやった芽衣は、またすぐに画面へと目を戻した。
次の写真は、芽衣の想像が真実であることを教えていた。
(この写真は自撮りだわ。雅樹の横にいる女性の。。。)
そう、画面では正樹が女性の胸に顔を埋めるようなポーズで写っていた。
そしてその女性の腕が前に伸びシャッターを押しているのがわかるアングルだった。
しかし、雅樹の反対側にももう一人の女性の姿があった。
その女性が、さっきの写真で雅樹のペニスを咥えて写っていた女性だった。
正樹の両脇の女性は、
二人とも明らかに正樹の好きなタイプであるスリムな体型をしていたが、
バストの大きさがかなり違った。
シャッターを切っている女性のバストは、
芽衣よりも遥かに豊かで、正樹が顔を埋めたくなるのも頷けた。
二人の女性が仲良さそうに正樹のペニスを舐めている写真。
正樹のペニスが突き刺さった女性の割れ目を拡げるようにして写っている、
豊かなバストの持ち主。
どの写真も、いやらしい瞬間を捉えた卑猥極まりない写真ばかりだったが、
被写体の顔は、どれもこれも必ず笑顔だった。
芽衣は、この写真の中に、当然と言えば当然だが、
自分の姿が写っていないことが悲しかった。
正樹のペニスを咥えている笑顔が自分の笑顔でないことが寂しかった。
さらにページを進めるうちに、
芽衣は、そこに別のフォルダがあることに気づいた。