10月:トライアングル-3
少し寂しそうな顔をして
「箱根に来たかったのは秋田さん」
と小さくつぶやいた。
「え?」
「今日の企画をしたのは秋田さんだよ」
「・・・」
「ドイツから帰って来てほのかが元気がないことぐらいみんな気が付いてる。
でもほのかが話たくないのなら私たちは聞かないから大丈夫だよ。
でも、少しでも元気な顔が見たいよねって。秋田さんが企画したの」
「そう、なんだ」
「本当は秋田さんもほのかと二人で来たかったんだと思うよ」
葵はほんの少し意地悪そうに苦笑いをした。
「でもそれじゃ、ほのかが心から楽しめないでしょ」
「・・・・」
「日帰りなのも、ほのかが小川くんに少しでも後ろめたくならないように」
「・・・・」
「あと、秋田さんとほのかを2人にしないでくれって」
「え・・・」
「秋田さんはほのかが気まずい思いをするのは少しでもイヤなんだって」
「・・・・」
「あんな人、いないよ、ねぇ・・」
2人が歩いて行ったその先を葵は見つめていた。
「小川くんを悪く言う気はないけど。
秋田さんの事も、考えてみるのも良いんじゃないかな」
私の反応をわざとみないように、視線をずっと逸らしたままで
葵は静かに言葉を選んだ。
「ほのかを幸せにしてくれる人は、誰なの?」
私を、幸せにしてくれる、ひと。