揺れる蕾(ロリータ・コンプレックス)-8
指先に更に力を込めたその瞬間、習字は眉を寄せ、悲しそうな顔をした。手を止めて悠菜の目を見つめる。しかしその瞳は、彼女を見てはいなかった。いや、彼女を見てはいるのだが、それは目の前に居る悠菜ではなかった。
「どうしたの、お兄ちゃん」
ふう、っとひとつ息をつき、習字は呟くように語りかけた。
「……悠菜ちゃん。君には子供が二人生まれる」
「お兄ちゃんと結婚するの?」
「いや、僕じゃない。それに、僕たちは、今日を最後に遠い未来まで会えなくなるんだ」
「何それ」
「でもね、いつかまた会える」
「ワケ分かんないよ」
「今は。今はそれでいい」
第二関節まで埋まっていた習字の指が反転し、ゆっくりと抜き取られていった。
「イヤ、抜かないで」
「分かってるよ」
再び挿入された指は、悠菜の中でゆっくり、ゆっくりと、往復を始めた。悠菜は、何が起こっているのか、自分が何をされているのか、本当の意味は分かっていなかったが、習字にされるままに、与えられる刺激をありのままに受け止めている。やがてその顔が歪み始め、口元は笑ったように緩み、身を捩り始めた。
「う……んん……」
九歳の小さくて可愛らしい唇から熱い吐息が漏れる。目はキツく閉じられ、眉根がキュッと寄せられて、太股がブルブル震えだした。
「あっ、ああっ……あぁあっー!」
抑制の掛かっていない大きな声が出た。彼女の内側の幼い柔肉と習字の指が擦れ合う部分から滲み出る熱を帯びた快感が、彼女の下腹部を焦がしているのだ。初めて経験するその感覚に翻弄され、震える唇の端からは涎が垂れ始めた。
「うっ、ううっ……あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……」
習字の指の動きと同調するように声が絞り出されていく。そして腹筋がピクピクとひきつり始めた。艶やかな黒髪を激しく振り乱す。もはや彼女は、下半身に与えられる刺激意外には意識を向けることが出来なくなっている。
「だ……ダメ、ダメダメダメダメ、何なのこれ? ダメっ、怖いよ、お兄ちゃん、ダメだよぉ……」
指の動きは止まらない。それどころか、更に速度と勢いを増していく。
「ダメぇ、あっ、あっ、あっ、ああっ、あはぁあっ、あああぁぁぁーーーっ!」
ガクガクガク、っと腰を跳ねさせて、悠菜は硬直した。
ガチャリ。
開くはずのないリビングのドアが、静かに開いていった。