第6章 俺は中村さんとセックス、ヤッた!-2
2人とも黙々と仕事をしているように見えるが、殆ど捗ってはいなかった。頭の中は他の事でいっぱいであった。
(チャンスだろ!2人きりだぞ!こんなチャンス滅多にないぞ!誘うか…、いやでも断られたら居づらいな…)
(やだ、緊張する…。仕事が全然捗らない…。誘ってくれるかなぁ…。でも誘われたら素直にうんって言えるかなぁ…。思い切って私から…。無理無理!出来ないよ…)
お互い不倫と言う大人の恋愛に踏み込もうとしている割には、まるで告白する前の高校生のような、そんな感情を抱いていた。中々会話するきっかけすら掴めないでいる2人。しかしそんなドキドキ感も涼子にとっては久し振りに感じるトキメキでもあった。
するといきなり隆文が立ち上がる。ビクッとして構える涼子だが、隆文は事務所を出て行ってしまった。少しガッカリするがホッとしてしまう涼子。一気に体から力が抜けた。
(トイレかなぁ…。ああ、何か緊張する…)
戻って来たらまた体が強張ってしまいそうだ。涼子は深呼吸して落ち着こうとする。
少し経つと隆文が事務所に戻って来た。隆文に目を向けると両手にコップを持っていた。
「中村さん、ちょっと一息つこうか。」
「あ、はい…、ありがとうございます。」
涼子の元へ歩み寄る隆文。涼子にコーヒーを手渡すと、隣の椅子を引き、座った。
「気が効かなくてすみません!本当は私が淹れてこなくちゃいけないのに。」
「あ、気にしないで?自分もちょうど喉が渇いたとこだったから。」
「ありがとうございます。」
コップに口をつけコーヒーを飲む涼子。おかけで少しずつ緊張が解けたような気がした。
「中村さんも大変でしょ?子供の面倒も見なきゃならないのに。」
「裏の実家で遊んでますから大丈夫ですよ。それに勉強しろしろうるさい私が居なくてせいせいしてるんじゃないかな。」
「そんな事ないでしょ。」
「まぁ私が言っても迫力がないから聞きませんけどね。あ、そうそう、上の子に最近彼女が出来たみたいなんですよー。いつもLINEばっかりしてて。今はいいですね、LINEとかあるから。私が学生の頃は携帯なんかなかったですもんね。」
「そーそー、あってポケベルとか!」
「あー!懐かしい♪ありましたねー。」
「だいたい普通に電話だったよね。相手の親が出ると緊張しちゃってさー。」
「分かります♪」
そんな会話をしているうちにすっかり緊張感も取れ自然に振る舞えるようになった。