第5章 両想い-4
終業時間になってもこの日隆文は外回りから帰って来なかった。後30分、あと20分、10分、1分と、わずかにでも顔を見れたらいいなぁと思いながらも隆文は帰って来る事なく涼子は事務所を後にした。
(顔が見たかったな…)
37歳にして高校生みたいな事言ってるなと自分でも思ったが、しかし恋をしている自分が嫌いではない。隆文を好きになる前よりも毎日がどこか心を躍らせている自分がいる。それだけで一日が楽しく思えたりするのであった。
(もう岸田さんを想いながらオナニーするの、2週間かぁ…。この歳でオナニーにはまるなんて思わなかったなぁ。オナニーがやめられない37歳なんていないよね、普通…。)
そんな事を考えながら電車に乗り家に向かう。
途中スーパーに寄り夕飯の食材を買う。仕事を終え、スーパーで買い物をし帰宅して夕食を作る。食事の後片付けをし風呂の準備をし洗濯物をたたみ、洗濯をして干す。そして少しゆっくりするともう0時を過ぎている。今まで深く考えた事はなかったが、自分はこのままずっとこうして歳をとって行くのだろうかと考えてしまった。そんなマンネリした日々の中に隆文が入ったのなら、どんなに毎日が楽しくなるんだろう、涼子はそう思った。
日増しに隆文に気持ちを惹かれて行く。
「抱かれたい…、岸田さんに…。」
オナニーを終えるといつも切ない気分になる。会いたくて会いたくて、抱かれたくて抱かれたくて仕方がない。頭の中ではいつも「いいですよ?」の返事の練習をしていた。隆文は喜んでくれるだろうか…、もしかしたら揶揄っているだけで本気じゃないのではないか…、不安の気持ちの方が多い。でも隆文が人を揶揄うような人間ではない、大丈夫。その不安と期待の狭間で涼子は悩んでいた。
(エッチとかそんな得意じゃない私にガッカリしちゃうかな…。)
正直男を喜ばせられるようなテクニックを持っている訳ではない。強いて言えば夫に、涼子の丁寧なフェラチオは最高だよと褒められるぐらいだ。それにしてもやり方が良く分からずゆっくりと舐めているだけだ。意図して丁寧で気持ちのいいフェラチオをしている訳ではない。みんなはきっと自分よりも色々知ってて何でも出来るんだろうなぁと、穂花や愛美を羨ましがるのであった。