女らしく【03】『過去と思い出と恋心』-2
「あっ…!もしかしてお前が蘆屋マコトか?
俺は九条大和、お前の式だ。歳は七、よろしくな♪」
コイツが、オレの式?
同い年だし、話に聞いてたよりは弱そうだ。
「無視するなよ。
でも、意外だな。女だったんだ」
なっ…なんでコイツ気付いたんだ?
親父が言うわけ無いし…
「なあ、胴着…直した方がいいんじゃないか?」
「えっ!?……きゃあああ!」
見れば転んだ拍子に胴着がはだけ、膨らみかけの胸元が露出している。
オレの胸は男として育てようとした親父に反抗するかの様に、最近膨らんできていた。
「み、見やがったな!」
急いで胴着を直し、詰め寄る。
「悪かったって!でも事故だろ?それに女だったらその言葉遣いはやめたら?」
その言葉にカチンときて言い返した。
「オレは男だ!オレは何年間も、男として生きてきたんだ!」
今更…女なんかになれるもんか……
諦め、負け惜しみの様に自分を偽る…
しかし、コイツはそんなことも見透かしているかの様に言う…
「無理に男を演じなくてもいいんじゃないか?
お前は女なんだから女らしくしてろよ」
コイツは笑いながら言ってきた。
「……お前に…お前なんかに…オレの気持ちが分かってたまるかぁ!」
勢いをつけて、鳩尾に一発、正拳突きを食らわす。
「ぐっ……」
「お前なんかにオレのことが分かるわけ無い!!」
そう言い残し、走って自分の部屋へと逃げ込んだ。
ここまでやれば、明日からは来ないだろう。
けど…心の奥ではちょっと後悔をしていた。
初めて、女らしくと言われた。
周りのヒトが誰一人としてかけてくれなかった言葉…
本当は言われたかった言葉…
女で在りたいと思う本当の自分を見てくれた様だった……
少し…うれしかった……
でも…
「明日からは来ないだろうなぁ……」
だが、次の日…
「よっ、マコト。おはよ!」
ソイツはまた、オレの前に現れた!