別章 芽衣の過去 高1の夏-4
翌朝。。
昨日は、シャワーさえ浴びていなかったことを思い出して、
バスルームに向かった。
両親とも、出かけたようで、家には誰もいなかった。
制服を脱いで、鏡を見ると首筋や胸元に、あざなのか、打撲のあとなのか。。。
それに、キスマークみたいなのも、いくつもあって。。。
パンティーは、生臭い液体でぐしょぐしょだった。
こんな匂いをさせながら、昨日、自分は電車に乗り、
家に帰ってきたんだ。。。。
そう思うと、急に恥ずかしく、自分がみじめに思えて。。。
思い切って、水のままのシャワーを、頭からかぶって。。。
泣いて。。。
叫び声をあげて。。。
シャワーの水流を、思い切り股間に当てて。。。
ねばついた液体が、奥の方から垂れてきて。。。
(妊娠?)
そんな不安も、頭の中をよぎったけれど。。。
白い液体に続いて、赤茶色の、ドロッとした、、、
(よかった。ちょうど、生理が始まった。。。)
どれほどの時間、水をかぶっていたのだろう。
顔を洗い、何度も洗い、髪を乾かし、
鏡を見る。
腫れぼったい目。
心なしか全体的にむくんだような顔。
明日から、どうしよう。。。。
いや、まず、今日はこれからどうしよう。。。
自分の部屋に戻り、ベッドへ身を投げる。
体のあちらこちらが痛い。
そうか、昨日の夜。。。。
昨夜の、部室での出来事が、少しずつ、思い出されてくる。
3人の先輩たちの顔。
菅野先生の顔。そして声。
(わたしの初体験だったのに。。。)
中学時代、付き合っていた香田くんの顔がふと頭に浮かぶ。
(こんなことになるんだったら。。。香田くんにあげたかったな。。。)
これが、わたしの初体験の話。
そのあと?
それこそ、よく覚えていないわ。
嫌な記憶って、脳が自然と忘れるようにするっていうでしょ?
でも、わたしは、あの晩のことは結構しっかりと覚えている方かもしれない。
それよりも、そのあと、どんなふうにして、
練習を再開した野球部で、どんなふうにマネージャー続けていたんだか、
担任の菅野先生や3人の3年生たちと、どんなふうになっていったのか。。。
よく覚えていない。。。
ううん。思い出したくないの。
だって、、、そのあとのわたしって、、、、
完全に壊れてたから。。。
そう、もう、どうでもよくなった、って言うか。。。
自暴自棄?投げやり?
そうね。何も考えずに、ただ、毎日を過ごす。
自分が無くなってた、かな。
だから、「現在」も、「未来」も、全く考えなかった。
そう、「過去」を考えないためにも、ね。
え?
大体わかるでしょ?
自暴自棄になった女子高生が、15歳が、そのあと、どんな青春を送ったか、なんて。。。
そう、正解。
性春時代ね。
過去を思い出さないように、考えないようにしてたから、、、
菅野先生に対しても、3人の先輩のことも、真奈美ちゃんのことも、
何も考えないようにしてたから、
普通、って言うか。何もなかった、のよ。何も。
だから、普通に接してた。
かえって、先生の方がびっくりしてたんじゃないかなあ。
だって、、、普通、考えたら、クビ、でしょ?
教え子に手を出した、しかも、レイプ。
おまけに、ほかの教え子とも付き合っていて。。。
最低、だよね。
先生が?
ううん、自分が。
だって、何も考えない、って決めたことで、
わたしの高校時代は。。。
そうね。
でも、やり直したい、とは思わない。
あれはあれで、
今となったらいい経験だった。
そう、いい思い出には決してならないけれど、
いい経験をしたわ。
チーちゃん?
うん。じつは、夏休みのうちに、黙って転校しちゃったんだ。
家も引っ越して、ね。
学校には、家庭の都合で、って伝えたらしいけど。
で、そのまま音信不通。
チーちゃんとの消息が分かったのは、ずっと後になってから。
そのことは、またいずれ話すわ。
で、高校3年の夏。
県大会の準々決勝で負けて、
今度は本当に、わたしの夏が終わったと思った。
そう、2年前のあの時と同じような状況の時。
3年生の挨拶があって、
マネージャー一人ずつ、って言っても、その時にはチーちゃん、いなかったから、
わたしと真奈美ちゃんが、挨拶して。。。
うん。そう。
で、あの時みたいに、夕方の部室。
真奈美ちゃんと二人きりになって。。。。
そしたら、、真奈美ちゃんが、突然泣き出して。。。
(どうしたの?終わった、のが、そんなに悲しいの?)
わたしが戸惑っていると、急にわたしに抱き着いてきて。。。
「メイちゃん。ごめんね。ごめんね。」って。
真奈美ちゃん、あの日のことを謝ってきたの。
あの日、わたしたちがあんな目にあったのは、自分のせいだ、って。
真奈美ちゃんのせい?
ううん。違う。
真奈美ちゃんは、わたしたちに何もしていないわ。
わたしたちに何かをしたのは、あの3人の男たち。
無理やりに、唇で、舌先で、手で、
そして、最後には、あの忌まわしい肉棒で、
わたしたちの体をまさぐり、
次から次へと襲い、犯し、
突き抜けるかと思うほどに激しく抜き差しして、
わたしたちの心と体を、
ボロボロになるまで犯していった。
わたしが真奈美ちゃんを押し戻そうとすると、真奈美ちゃんは、泣きじゃくりながらわたしにしがみついてきた。
そして、自分の過去を語り始めた。
そう、彼女自身の、初めてのときのことを。