夫 雅樹との世界 2-1
でも、今夜の雅樹は執拗だった。
「ボクの指の臭いを嗅いでごらん。そうすれば、ザーメンかどうか、解るだろ?」
雅樹はあくまでも芽衣に自分の指の臭いを嗅がせようと、芽衣の鼻先へ指を差し出した。
「しつこいんだから。ザーメンだとしたらそれはあなたのでしょ。昨日の夜のだわ。」
「昨日の?そうかなあ。昨日の夜、ぼくは君の中に出した覚えはないけれど。。」
「だったら、一昨日のでしょ。一昨日、あなたは、何度もわたしの中に出したわ。」
そう、確かにそうだった。一昨日の夜、雅樹は、少なくとも3度は芽衣の中に出し、そのまま満足げに眠りについたのだった。
「一昨日の?そうかなあ。ぼくには、もっと新鮮で、しかも、もっと若い男のザーメンのような気がするけれど。。。」
「ねえ、もういい加減にして。それよりも、わたしのここ。もっと触ってよ。」
芽衣は雅樹の顔をじっと見つめ、すがるような眼で訴えた。
「わかった。じゃあ、今日はこれで終わりだ。」
雅樹はそう言うと、グラスに残っていたワインを一気に飲み干した。
「えっ?なんで?なぜそんな意地悪言うの?」
芽衣は雅樹にすがりつこうとした。しかし、それを振り払い、少しきつい口調で言った。
「じゃあ、正直に話すんだ。そうすれば、続きをしてやらないこともない。」
「正直に、って、いったい何を話せというの?」
「わかってるだろ?君のオマ〇コから溢れ出てくるものの、本当の正体だよ。」
「だから、それは。。。。」
「じゃあ、やっぱり、今夜はお預けだ。」
雅樹はピンスポットのスイッチを切ろうとした。
「わ、わかったわ。ちゃんと、本当のことを話すから。だから、ちゃんと続きをして。ね?あなた。お願いだから。」
「続きをしてあげるかどうかは、君の答え次第だ。君がきちんと、本当のことを言うかどうか。その答えに、僕自身が納得するかどうか、だ。」
雅樹は、残ったワインをグラスにつぐと、再びベッドに座った。
「さあ、じゃあ、君の話を聞こう。本当の話を、ね。」
芽衣は素っ裸のまま、ピンスポットに照らされながら、一人芝居のように話し始めた。
「さっきの、あの、今、わたしのオマ〇コから溢れているものは、多分、わたしの、だと思う。一昨日の夜、確かにあなたは、わたしの中に何度も出したわ。その余韻を楽しみながら眠ったから、確かに昨日の朝まではあなたのモノがわたしの中に入っていた。でも、昨日の出勤前に、しっかりとシャワーを浴びたの。」
芽衣は、手も動かさず、必死に語りだした。
「昨日の夜、あなたは、わたしの中には出さなかった。それに。。。」
「芽衣。ぼくが聞きたいのは、それからのことだよ。前の晩、そのまま眠ってしまった君が、出勤前にシャワーを浴びることくらい、ぼくにはわかっている。僕が聞きたいのは、そのあとのことさ。」
「そのあと。。。」
「そう、一昨日のぼくのザーメンは、昨日の朝、きれいに洗い流された。そして、昨夜、ぼくは君の中に出してはいない。つまり、ぼくが聞きたいのは、今日、君が出勤したあとから、ぼくが家に帰ってくるまでのことだ。」
芽衣には、雅樹の意図がようやく見えてきた。
(夫は、わたしの、今日一日の行動に疑問をもっているんだわ。)
「今朝、出勤してから、あなたが帰宅するまでの、間のこと。。。」
「そうだ。仕事中に何があったのか。それとも、家に帰るまでに、何があったのか。あるいは、ぼくが帰るまでの間に何があったのか。」
芽衣は観念した。
(今夜の雅樹は本気だ。)
「わかったわ。ねえ、座っていいでしょ?」
「ダメだ。せっかくライトも当たっているんだ。女優にでもなったつもりで話してごらん、本当のことを。。」
「そう。わかりました。」
芽衣は、(この感覚って、何年ぶり、、、いや、もっとだわ。懐かしい。)と心のどこかで感じていた。そしてすべてを話す気になった。
(その結果、どうなっても、それは仕方ないわ。自業自得だもの。)
芽衣は、
今日の仕事帰りに「悠一」という男性と会ったこと、
その男性とは、半年以上から今までに、何度も関係をもっていたこと、
今日は、自分のうっかりから、これからという時に帰ることになってしまったこと、
(だから、今日、わたしの中に悠一のザーメンが残っているはず、ないわ。)
帰りの電車の中で、向かい側に座った男子学生を、態度で誘惑したこと、
帰宅してからは、しばらく仕事をしていたけれど、その最中も刺激が欲しくて欲しくて、雅樹が帰ってくる直前に、我慢できずにオナニーをしてしまったこと、
いく、という直前で、雅樹が帰ってきてしまったこと、、、
「だから、ずっとずっと、我慢ができないくらい、欲しくて欲しくて仕方がないの。」
それらを一気に雅樹に話すと、芽衣はその場に座り込んだ。
「ふ〜、疲れた。。。。これで全部。嘘は、一つも言っていないわ。」
雅樹は芽衣が話している間、一言も口を挟まなかった。
芽衣がしゃがみこんだのを見て、ゆっくりと立ち上がると、ワイングラスのワインを口に含み、自分の顔を芽衣の唇に近づけた。
そして、芽衣の口の中に赤い液体をゆっくりと流し込む。
「どうだ?喉が渇いただろ?ただろ少しは落ち着いたかな?」
「ええ、そうね、で、これからわたしは、どうすればいい?荷物の整理もあるから、今夜は無理だけど。。。」
「なんだ、旅行でも行くつもりかい?そりゃあ、急な話だなあ。」
「だって、ほかの男と、ずっと関係をもっていたなんて知ったら、あなたもただじゃ済まさないでしょ?」
雅樹は芽衣の肩を抱きよせながら言った。
「君が正直に話してくれたからね。今まで以上に素晴らしい夫婦生活が始まりそうだ。」
雅樹はそう言うと、芽衣をベッドへと誘った。