夫 雅樹との世界 1-1
家に帰りつくと、時計は6時を回っていた。
(まずは着替えて、、、あ、洗濯物。。。)
夫は、今夜は遅くなると言って、出かけた。
おそらくは、夫が帰ってくるにはまだ2、3時間はあるだろう。
芽衣もそのつもりで、悠一との時間をつくったのだから。
しかし、それが思わぬ形で、こんなに早めの帰宅となった。
そうなったならば、それはそれで、済ませておきたいことがたくさんあった。
芽衣は、洗面所で化粧を落とすと、鏡に映る自分の顔をじっと見つめた。
気のせいか、顔は赤らんでいて、目は、物欲しげにうるんでいるように思えた。
(ダメダメ、時間がもったいないわ。)
寝室に入り、着替える。さっき、ホテルを出るときに履き替えたばかりなのに、パンティーの股の部分は、糸を引くほど濡れていた。
体もうっすらと汗ばんでいる。
(そうだ、まずは、シャワーを浴びてから。)
そうも思ったが、今の芽衣であったら、恐らく、1時間以上、バスルームに入ったきりになるだろう。
バスルームで股間にシャワーを当て、激しい水流を味わう。
中途半端になってしまった悠一との時間を取り戻そうと、そうした行為に没頭してしまうに違いなかった。
それならそれでも良いのだが、芽衣は、せっかく出来たこの時間を使って、来月に予定されている、あるイベントの準備をしたかった。
これは、夫だけでなく、子たちにも見られたくはないことだった。
あと2時間あれば、おおよそのものは出来るだろう。
芽衣は、そう考えて、シャワーを諦めた。
芽衣がシャワーをやめた理由は、もう一つある。
(それに、明日は雅樹も休み。今夜も当然、求めてくるに違いないわ。だったら、今のままでいた方が、あの人も喜ぶかもしれない。)
帰ってきた夫を刺激するための材料になるとも考えたのだ。
素早く考えを切り替えると、芽衣は部屋着に着替え、洗濯物を取り込み、たたみ始めた。そして、それをちんとそろえて引き出しにしまう。
引き出しの奥にしまってある数本のバイブに一瞬手が触れたが、芽衣は迷わずに立ち上がり、クローゼットの奥から大きな紙袋を取り出した。
イベントの準備を始めた芽衣の頭には、ホテルでの出来事や電車の中で恥ずかしい行為にしたことが、何度も何度も往き来した。
そして、そのイメージが、準備しているイベントでの光景と重なり、帰宅してから履き替えたばかりの下着が、少しずつではあるが、もう濡れてきているのがわかった。
作業を進める手元がおろそかになり、つい、股間に手が伸びそうになる。
(我慢よ、芽衣。今は、ダメ。)
芽衣は自分に言い聞かせながら、作業を進めた。
9時を過ぎても、雅樹は帰ってこなかった。
いつもは最寄りの駅に降りたところで、必ずメールがあった。
「今、着いた」
そのメールも、今日はまだない。
イベントの準備も大方終わり、その片付けも素早く済ませ、あとは夫の帰りを待つだけになっていた芽衣は、少し拍子抜けした。
(ああ、もうダメ。我慢できない。)
芽衣はとうとう我慢できなくなって、思わずトイレに駆け込んだ。
スカートを下ろすのももどかしく、芽衣はパンティーの上から、まだ興奮状態が収まらないクリトリスを刺激した。
さっきまでの悠一の荒々しい愛撫と、いつもの、頭の先まで突き抜けるかのような激しい腰使いを思い出しながら。
「あ、あ、いい、いきそう。。。」
(でも、ダメ。もう少しの我慢。。。)
興奮状態が続いていたクリトリスは思い通りに敏感で、芽衣はほどなく絶頂を迎えようとしていた。
(あ、あ、いい。で、でも、ダメ。雅樹の、雅樹のぶっ太いペニスでかき回してもらうんだから。。。ああ、我慢しなくちゃ。。)
頭ではそう思っていても、芽衣の手は自然にパンティーの隙間から中へと入りこもうとしていた。
(ああ、もう我慢できない。。。)
その時だった。
≪ピ〜ンポ〜ン≫
インターホンが鳴った。夫が帰宅したのだ。
(ひどいわ、雅樹ったら。このタイミングで。メールくらい、くれればいいのに。)
芽衣は、またもや中途半端な状態のまま、急いでスカートを上げ、うっすらと湿った指先を洗い、トイレを後にした。
「そろそろ、かな?」
帰宅後、軽く飲んでいた雅樹が意味ありげな表情で芽衣を見た。
芽衣は、やっとこの時が、という顔でうなずくと、雅樹の手を取り寝室へと向かった。
「おいおい、慌てるなよ。」
雅樹は飲みかけのグラスを手に持ち、芽衣に続いた。
寝室に入り、オーディオのスイッチを入れる。部屋の中に、ムーディーな、ゆったりとした音楽が流れ始める。
明かりを暗くしようとする雅樹に、芽衣が言った。
「ねえ、今日は、このピンスポット、使ってもいい?」
「どうした?いつもは、恥ずかしがるじゃないか。」
「そうね、でも、今日は、恥ずかしいことをしたい気分なの。」
芽衣はそう言うと、ピンスポットのスイッチを入れた。
薄暗い部屋の中で、芽衣のいる部分だけが照らし出された。
芽衣は、ベッドに座って飲みかけのワインを飲んでいる雅樹の目の前で、着ているものを脱ぎ始めた。
「おや?今日は、珍しく、ストリップを見せてくれるのかい?」
雅樹がうれしそうな声を上げる。
「そんな大げさなものじゃないわ。もし、そうなら、もっと素敵なランジェリーやベビードールに着替えてからよ。それに、こんなおばさんの体、今更見たくないでしょ?」
芽衣は、そう言いながらも、ブラジャーとパンティーだけになると、体をくねらせながら雅樹のグラスをとり、口に運んだ。そして、残っていたワインをすべて口の中に含むと、そのまま雅樹の顔を引き寄せ、キスをした。