女らしく【02】『デートと仲間と邪魔者』-5
「はあー…はあー…」
結局、二十人程の不良をほぼオレ一人で叩きのめした。
「ずいばぜんでじだ……」
リーダーが腫らした顔で土下座して謝る。
何で…みんな、オレの邪魔ばっかり………
「……帰る…」
途端に全てが虚しく感じた。
今日は…本当に楽しみにしてたのに……こんなはずじゃなかったのに………
「おい、マコト…」
大和が慌てて駆け寄ってくる。この苛立ちは誰のせいでも無いのに…
それなのに、オレは…
「付いて来るな!」
そう叫んで出ていってしまった……
「何で…あんなこと言っちゃったんだろう……」
駅前。
今更になって後悔をする自分が馬鹿らしい…
「悪いのは…勝手に怒ったオレなのに……」
大和…怒ってるかな……
もしかしたら…もう二度と口をきいてくれないかも………
胸が苦しくなる…
胃の中が鉛を入れられたみたいに重い…
…本当にオレ…馬鹿だ……
と、その時。
「あなたも一人?」
不意に頭上から声が降り懸かる。
「どうしたの?彼氏と喧嘩でもした?
はいこれ、良かったら使って」
見ると大学生くらいの女の人が小さなハンドタオルを差し出していた。
「ありがとうございます…」
「どうしたの?あっ…ごめん…嫌だったらいいんだ…」
僅かな沈黙が辺りを支配する。
「……実は今日…好きな奴とデートだったんです…
けど…いろいろと邪魔ばっかり入って……
それで…なんか虚しくなって……オレ…怒って帰っちゃって……アイツは何にも悪くないのに……悪いのはオレなのに………」
それを聞いて女の人は穏やかに答えた。
「確かに…不幸だったね…けど、それは誰のせいでも無い。彼のせいでも、もちろんあなたのせいでも…
だけど、いきなり帰っちゃったのは良くないね。
でも、それをあなたは悪いって自覚出来てる。
だったら、後は謝るだけなんじゃない?」
そう言うと女の人は口調と同じく穏やかに微笑んでいる。
…何故かこの人の言葉は自然にオレの中に入ってくる。