エピローグ-1
翌日は昨日の大雨が嘘のような快晴だった。
カブトムシおじさんと美奈子の大人の世界を覗き見た翔太は、あのあと帰宅してからも、マスターベーションを何度もしてしまった。
もちろんあの出来事は、誰にも話せない。
「おはよう」
いつもと変わりない美奈子が登校してきた。
翔太にも笑顔を向ける。
昨日と別人のようだ。可愛い美奈子がそこにいた。
翔太はつい昨日の、美奈子を思い浮かべ、勃起してしまう。
「(やべっ…)」
「どうしたの?翔太君?」
何か感じた美奈子が翔太に話しかけてくる。
「何でもない、何でもない(ホントにやべえな…美奈子ちゃん…)」
このとき翔太は、改めて、Kが羨ましく、美奈子とセックスしたいという思いに駆られたのだった。
いつもと変わらない美奈子を見ていると、昨日の事は夢だったのかと思える。
その次の木曜日もまた翌週も、美奈子はあの建物にKに抱かれに行った。
だが、翔太は2度とあの建物へは行かなかった。いや、行けなかった。
覗きたい想いはあった。
同時に、見つかったら、美奈子に嫌われるだろうし、Kは大人である。何をされるかわからない。
嫉妬のような感情も芽生えた。
後に、翔太はアダルトビデオを観て、思うのだった。
「(あの2人は好きあって、愛し合っていたのだろう)」
夏休み前の終業式…
「じゃあねーまたね、バイバイ」そう言って、翔太に笑顔で挨拶した美奈子。
それが、翔太が見た最後の美奈子の姿だった。
美奈子は夏休み中2日ある登校日にも姿を見せず、2学期の始業式の日も欠席だった。
何より、その夏休みのカブトムシ捕りは、Kの都合で中止になった。
翔太は嫌な予感がしたのだ。
美奈子が欠席したのでクラスはざわついていた。
クラスの誰かが言った。
「(美奈子は夏休みに何かあったらしい)」と。
担任が来て、ホームルームが始まると、担任は神妙な面持ちで、翔太達に告げた。
「倉田美奈子ちゃんなんだけど、突然だけど、お父様のお仕事の関係で、転校しました」
クラスがざわめく。
「(嘘だ。カブトムシおじさんと何かあったんだ)」
当然翔太は(アノ)出来事と関係していると考えた。
「先生も突然で驚いたんだけど、お父様のお仕事の都合だから…美奈子ちゃんは、皆にお別れの挨拶が出来なくてごめんなさいと伝えて下さいって、連絡をもらいました」
生徒がどこに引っ越したのか、手紙などを出したい。と質問したが、担任は上手くはぐらかした。
しばらくして、Kの造園会社も、地元から撤退していることがわかった。
結局、美奈子の転校理由も引っ越した先も知らされることなく、月日は流れた。
同窓会が何度か開かれても、美奈子が出席することはなかった。
居場所が分からないのだから当然と言えば当然なのだが。
同窓会の席で、翔太はさりげなく、元担任に美奈子のことを聞いてみる。
その態度や物言いで、元担任は恐らく、美奈子の転校理由を知っているだろうと思われたが、翔太はそれ以上突っ込まなかった。
〜現在〜
翔太は、三つ編みの生徒を見送って、あの日に想いを馳せていた。
「不都合な事態が起こったんだろうなぁ…凄かったもんなぁ…アノ2人…」
「何が凄かったんです?荒木先生」
大学生のバイト講師が話しかけてきた。
「何でもないよ。メシでも行くかい?奢るよ」
「ごちになります」
〜了〜