あの日の記憶-1
現在。
「先生、さようなら」
「さようなら」
各々の生徒が、塾講師の翔太に挨拶をして、帰っていく。
「先生、さようならー。また明日」
「おう、頑張ってな」
三つ編みの少女は笑って会釈した後、翔太に手を振って、帰って行った。
三つ編み…翔太は、三つ編みの少女を見るたびに、かつての初恋の相手美奈子と、あの事を思い出す。
「はあ…」深いため息をついた翔太。
もう遠い過去の出来事だが、鮮明に覚えている、(あの事)
初恋の少女美奈子…果たして、今はどうしているのか?
「どうして…」もう考えても仕方ない事なのだが、翔太の心に、色んな「どうして」という思いが去来する。
翔太が帰り支度をはじめた頃、突然の豪雨が降りだした。
1980年代の6月のあの日…あの日も大雨の日だった…