あなたは皆と‥‥。(11)-3
考えれば――白香の漫画家や映像作家という夢は近いものがあるから、彼女と共同作業といったことも考えられるかもしれない。妹萌えの素材としては、桃香という格好の観察対象がいるではないか‥‥。姉妹想いの紅香も、きっと賛成してくれるだろう。
これが、まだ将来の夢、あくまで「夢」にしかすぎないことは、あなたも承知していたから、この場で口にしようとは思わなかった。その「共同作業」や「観察」の経過中に、
(当然、エロい展開になる‥‥。理由をつけておっぱいを揉みまくり――)
と邪念が湧いてきたからでもあるが‥‥。
‥‥それから紅香は、また別の話をしてきた。より、日常的な――。
「朝の通学を、一緒にしない?」
と。なんでも、彼女は駅まで自転車通学で、その部分を、というのであった。
しかしそれは、あなたにとっても彼女にとっても、かなり遠まわりなコースになり、実現困難だった。現実とはこういうものだ。その話は、月一回にしようかという流れになった。
が、通学とは別に、ふたりでサイクリングしないかとも言ってきた。時間帯によってあまり人がこない神社や、そこから緑が連なる公園を知っていると。
(なんか急に、自転車にこだわりだしたな‥‥)
あなたはいぶかしく思いながらも、楽しい予感にときめいていた。
(そのサイクリングのとき、紅香はミニスカをはいて来てくれたりするのだろうか‥‥)
そんな空想に耽りながら、あなたは青春を感じていた。
また、さらに別に、これも紅香の提案で、そのうちふたりで海へ行こう、ということになった。
泳げる場所ではないが、抜群の景色を眺めることができるという隠れスポットを、白香から教えてもらったというのだ。泳ぐ場所からは遠いが、それゆえあまり人に知られていないスポットだそうだ。そこのベンチで、最高の夕陽をふたりで眺めたい、と。
あなたはその場所を聞き、安久須駅で待ち合わせることにした。あの「安久スペース」で、だ。
(そのとき紅香は先に来てるかな‥‥。それとも、あの初デートのときのように、俺が先に来ていて、駆け寄ってくるだろうか‥‥?)
そう思った後で、あなたは自分に言い聞かせた。
(紅香は真面目な性格だから、実際は先に彼女が来ていて、がっかり、とかになりそうだな。そういう場面になっても、失望しないようにしよう。少しは成長しろ、俺‥‥)
――もう真夏だろう。あなたたちはふたりで電車に乗るだろう。そして、東清田駅を通り過ぎ、海のほうへと向かうのだ。紅香は、
「そういえば、わたしたち、手も握ってなかったね。――あんなことしたのに‥‥」
なんて言って、微笑んだりするのだ。
ベンチに並んで腰かけ、あなたたちは見つめあい、手を握り合うことになるだろう。お互いの指が、影が伸びてゆくよりはかろうじて速いほどの、ゆっくりとしたペースで。夏の夕陽が、あなたたちを祝福してくれていることを感じながら‥‥。