金縛り-17
そんな渇いた日々を送っていた所に、昨夜の突然の金縛り。
ふと泉はトボトボ歩いていた足を止めた。
もしかして、あれは。
あまりの気持ち良さに我を忘れるほど乱れた泉だったが、あの濃厚な愛撫の仕方、あれは翔だったのではないかーー?
足の指をキュッと縮める。
翔以外にも男と身体を重ねた経験がある泉だが、足の指の間まで愛撫してきたのは翔だけだった。
初めての快感に、翔は「泉は足の指を弄られるのが好きなんだな」と意地悪そうに笑っていたっけ。
翔が亡くなったのは、昨夜。
泉が金縛りに遭って、散々身体を弄ばれていたのも昨夜。
そして、足への愛撫の仕方ーー。
不意に涙がポロリと溢れた。
多分、いや、そうだ。
泉の弱点を熟知し、焦らすように愛撫し、泉をケモノにしてしまう翔のセックス。
きっと、彼は最期に泉に逢いに来たのだ。
「バカヤロー。逢いに来るなら、あんなエロいことしないで、もっとロマンチックに逢いに来てよ……。ホント翔ったらスケベなんだから」
ーー俺、泉とのエッチ大好き。
愛し合ったあと、息もまだ荒い泉に向かって、バカみたいに笑う翔の顔が不意に浮かんで、自然と顔がにやけてしまう。
だが、涙だけはドンドン止まらなった。
最後の最後で、泉の身体に忘れられない快楽を刻みつけて、そして自分はサッサと空の向こうに行ってしまって。
きっと、あれが最後のセックスだったんだ。
泉はとうとう手で顔を覆い激しく泣きじゃくったまま、しばらく動けなくなっていた。
〜end〜