金縛り-16
お母さんは何度も謝ったが、それを責める気にはなれなかった。
そもそも翔が病気を隠して自分勝手に別れてしまったからややこしくなったのだ。
「カッコつけんな、バーカ」
あたしに未練を残さない為、ワザとあんな嘘で別れやがって。
土曜の早朝は、ほとんど人通りのない静かな住宅街。
泉はこれから日差しが強くなりそうな青空に向かって呟いた。
(そんなにあたしが弱い女に見えるかよ)
悔しくて唇を噛みしめる。
翔が本当のことを言ってくれてたら。
最期まで側にいて欲しいと本音をぶつけてくれてたら。
あたしはこの抜け殻のような一年間、ずっと翔の側についていたのに。
別れた当初はあまりに辛くて、いろんな男と寝たこともあった。
だけど、他の男に抱かれるたびに思い出すのは翔とのセックスのことばかり。
次第に他の男と身体を重ねることの虚しさに耐えきれず、泉は一人でいることを選んだ。