金縛り-14
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翔の家からの帰り道は、抜けるような青空だった。
何度も通ったことがあるこの道が、何だか別の景色に見える。
この空だっていつもより青が鮮やかで、眩しく見えて、泉の瞳の奥はジワリと痛んでくる。
ーー翔のお母さんからの電話はにわかには信じられなかった。
お母さんも交えたドッキリでもして、まだ僅かに未練の残る泉を笑い者にしようと企んでるとすら思ったほどだ。
だから、翔の家に行けば、あたしを小馬鹿にしたような意地悪な笑顔が待ち構えている、そう思ったのに。
翔の家で出迎えてくれたのは、お母さんの泣き腫らした顔と……仏間に眠る翔の姿だった。
白い布まで顔に掛けて、凝ったドッキリだななんて思った泉は、胸の前で組んだ大きな手に触れた瞬間、涙がボロボロ溢れてきた。
その恐ろしいほど白い手は、氷のように冷たくて。
お母さんが「顔を見てあげて」と取った布から見えた翔の顔は、ドッキリにしてはやり過ぎなほど痩せこけていた。
翔の変わり果てた姿に、泉は気を失いそうになった。
付き合っていた頃はあんなに逞しくて、健康的で日焼けした肌がよく似合う男だったのに。
その場でガタガタ震え出した泉に、お母さんが一冊の大学ノートを渡してきた。