金縛り-13
時計を見ればまだ7時にもなっていない。
誰だろうと画面を見て、ハッとする。
そこには昔の恋人の名前が表示されていたのだ。
震える手で通話をタップする。
「……はい」
泉の声も不審めいた低い声で応対をした。
別れてからはアイツとは一度も連絡を取っていない。
何度も別れたくないとすがりつく泉を、他の女と付き合うためにアッサリ捨てたかつての恋人からの着信に、ジワジワ怒りが込み上げてきた。
だが、電話から聞こえてきたのは、女性の、それも年配の声であった。
「もしもし、泉さん?」
「……どなたですか?」
「私、翔の母親でございます」
てっきり恋人だと思っていた泉は、意外な人物からの声に思わず居住まいを正した。
なんで。翔のお母さんが。こんな時間に。
なんとなく嫌な予感がした泉のこめかみから、冷や汗がツー……と伝い落ちた。
そして、翔のお母さんは震えた声を絞り出して、
「……昨夜、翔が目を落としました」
と言った。