女らしく【01】『実習と幽霊とリストラ』-1
初夏の昼下がり…
「まったく…アイツは何処に行ったんだ?」
多くの木々が植えられている校庭をショートカットの人影が走り抜ける。
背は高め、しなやかで無駄のない体躯はネコ科の肉食獣を彷彿とさせる。
瞳は強き意志の光を灯した黒曜石の様。
その瞳の上に細く引かれた柳眉は顔の凛々しさをより一層引き立てている。
その眉目秀麗な顔と乱雑に切り揃えられたショートカットの髪のため、一見、男か女か分からない。
しかし、よく見るとその胸元がしっかりと自己主張している…
突然だが、初めまして。
オレの名前は『蘆屋 マコト』。
歳は十七。
こんな口調だが性別は女。
何故、名前がカタカナかというと、マコトという名前には『誠』と『真琴』の二つの漢字が当て嵌まるからだ。
理由はオレに家督を継がせるため、親父がそれまでの女性名から男性名に変えたから。
だから、オレの戸籍を見ると『蘆屋 誠』という男の様な名前になっている。
正直、堪ったもんじゃない!
まったく何時の時代だよ!女のオレを男として育てるなんて!
家は代々続く陰陽師の家系。
けど今の時代、人間以外のモノ達もヒトに混ざって平穏に暮らしている。
だから今の陰陽師は化物退治のエキスパートというよりはヒトとヒト以外の仲を取り持つ外交官って感じだ。
そして、この『雄経学園』は闇の外交官とそのパートナーを育てるための学校。
まあそれは置いといて、オレは今探してる奴がいるんだが…
そいつはオレのパートナーでヒトじゃないんだけど……
…いた。
そこの木陰で昼寝してるのがオレのパートナー、『九条 大和』。
鋼の様に艶やかな髪と長身痩躯、しかしヒトより遥かに強靭な肉体を持つ鬼の一族だ。
ついでに言うと、額にはちゃんと角も付いている。
とにかく、叩き起こすか。
「おい!大和、何時まで寝てんだ!もう昼だぞ!」
「んあっ?」
眠たそうに目を開ける。
…が、すぐに閉じる。