女らしく【01】『実習と幽霊とリストラ』-4
けれど、見る者を蠱惑する妖しい輝き。その光に魅入られる…
だが、次の刹那…
ズシャ…
大和の持つ霊剣──【宵闇】が輝き、大きく袈裟斬りにされた人影が粒子状になり消えていく。
「完了…だな」
街に出て、早速説得しようとした若者(幽霊)に襲われ、仕方なく強制退去ということになった。
でも…
「やっぱり、幽霊だからって気持ちのいいもんじゃないよな…」
「…仕方ないぞアレは。既に2段階目に移っていたから、結局は誰がやらなくちゃいけなくなっただろう…」
先程、斬った幽霊は爪がナイフの様に変わっていた。
時に肉体という制約から逃れた魂は、その姿を変化させることがある。
「あのままじゃ、他に被害が出ていた。
だから、マコト…お前が気に病むことはなんて無いぞ」
「……ありがとな♪」
こういう時にコイツがかけてくれる言葉が一番オレの気持ちを楽にしてくれる…
「まあ…とりあえずは片付いたから後は気分を変えてブラブラしてくか?」
「…そうだな!」
実習の後は少し時間が余るから遊んで帰ることが出来る。
オレは大和と一緒にいられるこの時間が大好きだ♪
だって、デートみたいだろ?
さてと、何処に行こうかなっと…
そんなことを考えてた矢先に……
「…つまり、会社をリストラされて、ショックのあまりフラフラとしていたら車に跳ねられたと…」
「……はい…しかも妻なんか私の保険金でかなりいい暮らしをしてるんですよ!」
…で、今オレ達の目の前にいるのは中年サラリーマンの幽霊。
はあ〜…最近こんなのばっか……
遊びに行こうとしたら、フラフラとしてるので成仏を勧めてみることにした。
「そうか、おっさん。あんたも苦労してきたんだな……」
「分かったくれますか!」
大和はそう言って心の底から同情している。
大和はこう言う話に弱い…
けど、オレはこういうの嫌いじゃない。
一部の奴等に言わせれば、こういった感情は本来、この仕事には相応しくないそうだ。
確かに、中には話なんか聞かない奴もいるけど、すでに死んでいるからといって何をしてもいいわけじゃない。
だからこそ、話し合いによって解決するのが一番だ。
少なくともオレはそう考えている。
それに、コイツのこういうところにも惚れてるから…
「いやぁ、最後に話の分かる人がいて良かった…これで成仏出来ます」
「おっさんも達者でな…逝き方は分かるか?」
「ええ、大丈夫です。ありがとうございました……」
そう言うとサラリーマンの幽霊は光の粒子となって風の中へと消えていった。