あなたは皆と‥‥。(4)-1
話は、また昨夜に戻る――。
「対戦ん〜? 仲間がぁ〜? 苦戦んん〜?」
白香・桃香コンビに嘘がバレたあなたは、守勢に立たされていた。「ような」ではなく、あなたの口内は、実際に酸っぱくなってきていた。その酸味は、「甘酸っぱく」などではまったくなかった。姉・白香はあなたの鼻先に、あなたのスマホを突きつけるようにかざしてきた。あなたは取り戻そうと何度か手を伸ばしたが、そのたびにさっとかわされ、むなしく空を切ったのだった。
「ねえ、海田くん、決戦‥‥てなに? このゲームのどこでどう、決戦をするわけ?」
この真っ赤な嘘も、暴かれた。蒲生白香は恐ろしいほどの勢いであなたのスマホを操作し、すでにゲームシステムをあらかた把握してしまったようだった。
(こんな短時間で――。ま、魔女か何かか、この女は‥‥)
あなたに、なかば本気でそう思わせるほどの早さだった。
「い、いや、それは‥‥」
しどろもどろになるあなたに、桃香が姉の横に並び、「疑惑」そのもの、といった冷ややかな目つきであなたを攻めたてた。
「お兄ちゃんのウソつきぃー」
あなたは再び、目の前の蒲生白香に、そして三女の桃香に、支配される日々の到来を予感していた。口のなかはもう、酸っぱいというよりも、苦くなってきていた。これも、「ほろ苦さ」などでは、まったくなかった‥‥。
(泣きたい‥‥)
あなたは、心中でそううめいた。さすがに目の前が真っ暗になるようなことはなかったが、それぐらいの気持ちだった。己の不運を呪いたい心境だった。
が‥‥。
それは、杞憂に終わった。支配は、始まることはなかった。蒲生白香は肩をすくめながら、妙にさばさばした口調で、
「まあ、いいでしょ。小芝居の嘘くらい。――リアクション、面白かったし」
と言ってくれたのだった。
「へっ?」
その表情には、皮肉な笑みも浮かんではいるものの――‥‥ともかく、あなたの嘘を、あっさりとそれで済ましてくれたのであった。あなたは、わけがわからないながらも、とにかくこのチャンスを逃すまいと、急いでスマホに手を延ばした。
「じゃあ、返し‥‥」
しかし、それはまた彼女に、ひょいとかわされたのだった。
「‥‥‥‥」
「――ていうか、このキャラデザ、どこかで見たことあるのよね‥‥」
そうつぶやき、首をひねる白香。そんな長姉に、末妹が意外なことを言い出した。
「お姉ちゃん、知ってるはずじゃん。だって、この前やってたでしょ?」
「え‥‥」
あなたは驚いた。白香がこういうゲームをプレイしていたとは、意外だった。