あなたは皆と‥‥。(2)-2
あなたは、一度だけすれ違った、ナントカ研究所のあの風采の上がらない片桐という男の姿を思い浮かべた。紅香によるとロリコンらしく、あなたに続いて桃香の調教も手伝ったらしい。
桃香との関係はわからないが、おそらくあのコが受け入れれば――白香との力関係もわからないが、これも白香が許可すれば――勉強を教えつつ、机についた桃香の背後から頭越しに胸を視姦して、隙を見てそこに手を伸ばし、撫でまわしにかかったりしそうだった。
そしてやがて、揉みしだきにかかる‥‥。
(俺にはわかる‥‥。あの目は、そういう目だ――)
あの男の、一見優しそうでもある眼鏡の奥に宿っていた好色な光を思い出して、
(あまりにも――危険すぎる‥‥!)
と、あなたは義憤に駆られたのだった。
さて、いま‥‥。
「じゃーん」
紅香があなたがいる部屋に戻ってきた。言ったとおり、服を着替えて――。
彼女は、清蘭学院の制服姿だった。
下は、紺色のニーソックスに、グレー系のチェックスカート。上は、清純な白のスクールシャツ。胸にははっきりとしたふくらみがあり、谷間があった。そこに、まるで小川のように、細いエンジのタイが流れていた。これこそ、リボンリボンしたタイよりもあなたがこちらを好む根拠だった。
(いや、というより‥‥)
あなたは考える。女子校生の制服では、これまであなたは漠然とこのタイプが好きだったのだが、紅香のこの姿を見て、そのことがはっきり認識できたのだった。
昨夜の家庭教師の話‥‥。
(俺が――桃香の家庭教師をするなら、どうするか‥‥)
あなたもその場で、考えたものだ。
(勉強を教えつつ、机についた桃香の背中から‥‥。これは、基本だろう――)
頭越しに、服を包まれたおっぱいをたっぷり目で堪能して――。
(そして、隙を見て手を伸ばす‥‥。撫でまわしにかかり、可能ならば鷲づかみに――‥‥)
そこまでイメージしたところで、あなたはふと、
(同じじゃないか、俺‥‥)
と気づかされたのだった。
(い、いかん、変な方向に行くな、俺‥‥!)
あなたは、話題を逸らそうと考えた。また同時に、性的な妄想に入り込もうとする己の気を、逸らそうとも考えた――いい手が浮かんだ。
「あ‥‥!」
あなたは、スマホを取り出して、わざと素っ頓狂な声をあげたのだった。これには、背後の姉妹も何ごとかと思っただろう。彼女たちにこのスマホのゲームのことを話した。対戦があることも。そしてあなたは、少しのあいだ画面を凝視し、さも悔しそうに芝居を打った。
「あー、対戦、もう始まっちゃってるよ‥‥! 仲間が苦戦してる‥‥――悪いけど、十分間、絶対話しかけるなよ‥‥。決戦だからな‥‥!」
あなたは叫ぶように言い立てたこれは、厳密には、嘘だった。対戦は、そのスマホのゲーム内で実際に行なわれていた。が、画面に表示されていた敵チームはあまりにも強く、あなたひとりでは到底敵いそうになかった。その数値だけを見てあなたは、実際に対戦に突入する参戦ボタンを押していなかったのだ。「決戦」に至っては、まったくの嘘。そんなシステム自体、そのゲームには存在していない。