女の40は辛い-1
「ここにお座り」
布団の脇に正座した淑恵は顔付きが変わっていた。
「もうお父ちゃんはうちを女と見てくれへんのよ」
「おばさん、きれいだけど」
「そないなこと言うてくれるんは義雄ちゃんだけや」
淑恵は布団の縁を掴んだり離したり、落ち着きがなかった。
「義雄ちゃんはまだ分らんやけど、女の40は辛いいん」
30後家は通せても40後家は通せん
義雄がそんな言葉を知る由もない。淑恵は後家ではないが、41歳、眉間に皺を寄せにじり寄るその姿は言葉通り、すがるように義雄の浴衣の裾を掴んでいた。
「義雄ちゃん・・」
「ど、どうしたの」
妙な気配を感じた義雄は後退りしたが、淑恵の手が浴衣の帯にかかっていた。
「しとうて、しとうて、もうあかんのよ」とにじり寄った彼女は突然、「堪忍よ」と義雄の胸に抱きついてきた。
「あ、いや・・」と義雄は戸惑っていたが、体は正直。淑恵からほのかに漂う香水の匂い、そして感じる体温に、下腹部は硬くなっていた。
「お、おばさん・・」
「お父ちゃんには内緒やで」
淑恵は義雄の浴衣の襟を掴んで、唇を重ねてきた。
チュッ・・やわらかい感触、だが、味わう間もなく、直ぐに離した。義雄は頭が真っ白になってしまった。