紅香語り(7)-1
さらに一週間が、経ちました‥‥。
世間では、夏に向けて、いろいろ準備をしている時期でしょう。でも、わが蒲生家では‥‥。
――いえ、もうそんなことは、言ってられません‥‥。
いまわが家は、桃香は不在で、わたしとお姉ちゃんのほかは、監視役を兼ねた幸也くんだけがいる状況です。でも、家の各所で、取り付けられた監視カメラが回っていました。元はお姉ちゃんが用意していたもので、いまは桃香が使っています。あのコはにやにや笑って言いました。
「いままで偽物で騙してたんだね、お姉ちゃん。さすがぁ。でもね、今度は正真正銘、本物だよ♡」
コントロールは現在のあのコの部屋から――つまり、元の白香お姉ちゃんの部屋からしかできない代物です。あの部屋自体にも、いろいろな機器が設置されているようです。取り外そうとされる等、各カメラや装置に異常があるとすぐに、桃香が新しく持ったスマートフォンに連絡が行く仕組みでした。
そして白香お姉ちゃんのあそこには、特殊なバイブレーターが挿入されていました。同じく、外そうとしたら信号が送られるようになっており、桃香はスマホによる遠隔操作で、これを起動させられるのでした。これらすべて、やはりあの研究室製で、テストもすでに行なわれていました。こういうわけで、白香お姉ちゃんやわたしは、
(それでも――!)
わたしは、もらった勇気を奮い起こして、行動に出ることにしました(そうです。もらったのです‥‥)。桃香の同志である幸也くんに、不穏な頼みであることを承知しながら、しばらく外に出ていてほしい旨を、お願いしたのです。白香お姉ちゃんを想うなら、と‥‥。
「僕は、東島幸也です」
幸也くんのその言い方には、こだわりが感じられました。
「いまは若輩者ですが、将来は総帥として全国のグループを率いる、東島家の跡取りなんです」
「‥‥‥‥」
「――白香さんのおっぱ‥‥あ、いや、裸‥‥い、いや――し、白香さんのことはずっと見ていたいのですが‥‥。でも、聞き分けは、あるつもりです」
わたしは、彼のその態度にすっかり感心してしまいました。
「そういう教育を、受けているんです、僕は。総帥は大げさかもしれませんが、リーダーになる身として」
「用事が終わったら、電話いたします‥‥」
年下――桃香の同学年である彼に、わたしは、思わず敬語になっていました。
「わかりました。――では、失礼いたします」
ガチャ。パタ‥‥ン。
せっかくのお姉ちゃんのおっぱいへの未練を見せることなく、幸也くんは、家の外へ出てゆきました。わたしは、彼の立派さに感じ入りながら、自分もなすべきことをせねばと、いまはお姉ちゃんとの共同になった自室に入りました。