3-1
「ちょ、な、何なの!?」
俺が掴んだ手を思いっきり振り払ったみかげは、こちらを睨みつけていた。
異性と意識したことのない男友達が、狼に豹変して戸惑っているのだろう。
みかげの表情には動揺と、混乱と、怒りと、そしてわずかな怯えが浮かんでいた。
でもな、みかげ。俺は知っているんだぜ?
俺にワザワザあんなイタズラ電話をしてくるくらいだ。
本当は、俺にあの声を聞かせたくてたまらないんだろ?
そんな強がった顔をしていたって、その仮面の下は俺にあのエロい声を聞かせたがってる淫乱女だってことを。
フッと小さく笑った俺は、精一杯威嚇している猫のような彼女を再び腕の中に収めると、そのまま強引に彼女の唇を奪ってやった。
「……っ!!」
突然のキスに、みかげは反射的に俺の身体から逃れようとするのだが、彼女の小さな頭をしっかり掴んでいるのでそれは叶わなかった。
柔らかい唇はカサつき1つなくて、なんて滑らかなんだろう。
そのキスの心地よさに、俺はまるで食らいつくようにみかげの唇を貪った。
「んっ、雅也っ……やめて」
キスの合間になんとか拒否の言葉を発するみかげだが、その言葉の弱々しさに、本気の拒絶は含まれていなかった。
「……なんで?」
「なんでって……あたし達こんな事するような関係じゃないでしょう?」
俺とのキスですっかり口紅が落ちたみかげの唇は、濡れて光って、そして小さく震えていた。
こんな事するような関係じゃないって、白々しい。
だが、その戸惑ったような怯えたような瞳が、不思議と加虐心を駆り立てる。
あのイタズラ電話で俺は散々みかげに淫らな命令をさせていたからかもしれない。
嫌がってみせたって、コイツの本心はすでに俺に筒抜けなのだから。