3-6
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あの快楽を覚えてしまった俺とみかげは、あれからまるで猿のように互いを求め合うようになっていた。
恋人になったから、それは自然なことだとは思うが、どちらかの家に行けばもはや服を着ている時間の方が少ないほど。
それほど俺はみかげの身体に虜になっていたし、彼女もまたそれに懸命に応えていた。
もともと、イタズラ電話で喘ぎ声を聞かせてくるような女なのだ。セックスが好きでたまらない人種なのだろう。
そして、今日もまた俺は、みかげのマンションで身体を交わりあっていた。
「はあ……はあ……」
お互い昇りつめて一仕事を終えても、みかげはまだベッドに横たわったまま、荒い呼吸で天井を眺めていた。
そんな彼女に、冷蔵庫から冷たいペットボトルのお茶を出して渡すと、みかげはゆっくり身体を起こした。
「なあ、そういや吉川からのダメ出しの歌詞は大丈夫だったのか?」
「うん、今度はバッチリ。歌詞全部変えてみたら褒められたよ」
吉川は今回の曲は明るいものだから、いつものネガティブな恋愛観の歌詞をやめて明るいラブソングにしたかったらしい。
もともとダークな歌詞を書きがちなみかげが、仕切り直して明るいものにできたのは、俺とのあの日のことがあってからである。
「それって俺のおかげだろ?」
茶化して言うと、みかげは顔を赤くしたままそれを誤魔化すようにペットボトルの蓋を開けた。
想いが通じた、それだけで自然とみかげの心の浮き足立ちが歌詞に表れたに違いない。
「……それは認めるよ。あたし、もともと自分から好きな人にアクション起こせない人だったから……」
お茶を一口飲んでから、口を尖らせるみかげに俺はついついおかしくなる。
「よく言うよ。あんなヤラシイイタズラ電話してくる勇気があるくせに」
今でこそみかげとのセックスがいちばんではあるが、あのイタズラ電話を受けた時の衝撃は、忘れられそうにない。
みかげは絶対そのことに触れて欲しくないと思っていたから、今まで話題にすることもなかった。
多分みかげのことだから、真っ赤な顔して「そんな電話してない」と否定するんだろうけれど。
その否定する顔もまた可愛いんだろうな、とついつい顔をニヤケさせてみかげの顔を覗き込んだ。