記憶の中の男C-1
『完璧な男』
22歳の時、先輩の友達で知り合ったヒロマサ。
28歳のヒロマサは完璧だった。
優しくて、かっこよくて、アメ車に乗ってて、おしゃれで・・・あげたらキリがない。
特に女の扱いがうまかった。
ある日、ちょっかいをだしてくるヒロマサがいやで「やめてよ!」って本気で怒ったら、
「あっそ。」
ってあっさり引き下がられて・・・
やめてって言ったのはうちのくせに淋しくなって、離れてソファーで煙草を吸ってるヒロマサの隣にちょこんって座った。
大抵の男は
「・・・なに?」
って冷たくしてくる。そうされると淋しさが増すだけ。
だけどヒロマサは
「なしたぁ??」
と、優しく抱きしめてくれた。そうされると離れられなくなる。
ヒロマサはどうすれば女が自分のそばにいるかを知っている。
そしてうちはまんまとその罠にはまった。
毎日のようにメールをして、毎日逢いたくなって、それに応えてくれるヒロマサがいて・・・
うちとヒロマサは幸せだった。付き合ってなくても、お互いを大切にしていた。
でもその幸せが長くは続かないこともうちとヒロマサは知っていた。
来月の初めには出張していたヒロマサの彼女が帰ってくる。
彼女がいるのにうちをそばにおいたヒロマサ。
彼女がいるのを知ってて見ないフリをし続けたうち。
彼女が帰ってくる前日、きっともぅ逢えないと想うと泣けてきた。
ヒロマサは優しくいつかのように抱きしめてくれて
「またね。」
って言ってくれた。
またなんてあるわけない、うちがいた場所に彼女がくるのに。
でもそんな一言にも期待してしまう自分。
最後の最後までヒロマサは完璧だった。
二週間後…
『逢える?』
二週間ぶりのヒロマサからのメール。
いろいろ考えた。
『彼女となんかあったのかな??』
『うちを選んでくれるのかな??』
都合のいい期待ばかり。
「久しぶりだね。彼女がさ、また出張で…」
ヒロマサの話をただ聞いていただけのうち。
ヒロマサにただ抱かれただけのうち。
ヒロマサの淋しさを埋めるためだけのうち。
それでも幸せに感じるバカなうち。