Happy Days〜始まりの日〜-2
クラスでは先生が今後の説明を終え、今日は帰る事になる。
しかし…、
「な〜んで、晃は戻って来ないのよ!!」
「俺に言うなよ…」
目を吊り上げ、不機嫌そうな姫乃…。
頼む晃、早く帰って来い!
「もうほっといて二人で帰っちゃう?」
「んな事してみろ。明日どうなると思う?」
大袈裟に嘆き、辺りの注目を引く晃。
その晃が俺達にぴったりくっついてるので自然と俺達も注目の的に…。
「……探しに行こうか」
「おう…」
晃を探すのには全然時間はかからなかった。
そこらの生徒を掴まえ、入学式で叫んだバカを見てないかと聞いたら講堂前でナンパしていたというのだ。
わかりやすいやつで助かった…。
講堂前に行くと片手を壁に付き、空いた手で大袈裟にアピールする晃がいる。
相手は…、ほう、ずいぶん可愛いな。
小柄で、長い髪を一本にまとめている。顔は姫乃とは逆でまさに可愛い系だな。
「あ〜き〜ら〜♪」
あ、そんな事考えてる間に鬼発進。
「げっ、姫!?」
「私を待たせてナンパしてるたぁ良い度胸じゃないの!」
「いや…、これはだな…、その……」
慌てた晃と、背後に阿修羅の見える姫乃。
晃も己の運命を悟ったようだな…。
とりあえず俺はこのコに謝っておこうか。
「ウチのバカが悪かったな」
「いえ、助けていただいてどうもありがとうございます」
「いや、助けたのあそこの阿修羅だしな」
姫乃は講堂前の空間を器用に逃げ回っている晃を追いかけ回してる。
ちょっと差が縮まってきたな。
「蒼くん…?」
「へっ?」
振り向くと女のコが…、俺の顔を覗きこんでいる…。
う〜、その顔でその上目遣いは反則だろう…。
いや、その前に今俺の名前を…?
「相沢家直伝、一本背負い!!!」
「うああぁぁっ!」
ゴシャ!!
あ〜あ、床コンクリなのに。死んだなこりゃ。
「あ、すみません。用事があるのでこの辺で失礼します。あちらの方にもありがとうとお伝えいただけますかね?」
「え? あ、わかった」
少し焦った口振りについ頷いてしまう。
「それでは、失礼します」
「あっ…」
行ってしまった…。
何で名前知ってたのか聞きそびれたな。
「ん? あのコは?」
「あぁ、用事らしくて帰った。助けてくれてありがとうってよ」
多少の返り血を浴びた姫乃が誇らしそうに胸を張る。
「ふっふっふ、今日も一匹悪を退治したわね」
「匹扱いかよ(笑)」
「十分でしょ」
「まあな」
笑う二人と死体が一つ。晃の報われる日は遠い。