桃香語り(6)-3
紅香お姉ちゃんはともかく、白香お姉ちゃんは、こっそり捨ててしまいかねないとも思うのです。この小さな小さな――性別は不明です――黒いペットを。
(――そうなんだよ、お姉ちゃん‥‥)
見ているうちに、気分が落ち着いてきました。そして、わたしの胸に、ひそかに巣食っていた悪魔の計画――考えが、首をもたげてきていました。
これまで、もちろん怖くもありましたが、白香お姉ちゃんが紅香お姉ちゃんからしたように、どういを取りつけたわけではないですから、さすがに悪いかなと思い、心の奥底にしまって留め金をかけておいた考え――計画なのですが‥‥。
しかしどうやら、その留め金は、仕打ちによってこわれてしまったようです。誰かさんのせいで。
(――いいんだよね、別に。調教を受けるのは、紅香お姉ちゃんに限らなくても‥‥。い・い・よ・ね?)
と‥‥。
そのときわたしの目は、妖しく光っていたかも、しれません。
さて‥‥。
わたし、片桐さん、そして幸也――。三人で額を寄せ合って話し合いましたが、結局、その場では結論が出ず、煮詰まってきたので、
「かく自、持ち帰っていいアイデアを考えてくることっ」
と、わたしはその話し合いの終了を宣言しました。
片桐さんはニコニコ笑っていました。が、わたしは幸也のなんともいえない渋い
「もう、暗い顔してっ。まったく心配性なんだから。――なんとかなるってっ!」
と、幸也の背中をパンと叩き、励ましてやったのでした。
ま、本当はわたしも暗くなっていたのですから、空元気でした‥‥。叩きたかったのは、自分の背中だったのかもしれません。
――暗い話は、きらいです。だからもう、しません。
(とにかく前向き。そして実行――!)
これが、このわたし蒲生桃香の、とりえですから。