桃香語り(5)-2
計画を、ばらばらなイメージではなく具体的に考えてゆくのは、恐ろしいことでした。なにせ相手は、あのずる賢く、オトナでもある白香お姉ちゃんなのです。
(頭も、力も、わたしでは到底かなわない‥‥。でもこうやって、道具は集まってきてるよ‥‥?)
わたしは、手にしたそれを片桐さんに返しつつ、包装と持ち帰れる入れ物を頼みました。片桐さんはきょとんとしていましたが、スタッフの人に頼みに引っ込み、思ったよりも早く、地味な紙袋を提げて戻ってきました。心配だったので見てみると、袋の底にそれは直接放り込まれてはいなくて、ちゃんと、というべきなのでしょうか、コンビニか何かのビニール袋にくるまれていました。
まあこれでも、怪しいといえば怪しいですが、直接手に持って街を歩くよりは全然マシでしょう。
ビニール袋の中身。それは、白香お姉ちゃんが言う調教の証、わたしや紅香お姉ちゃんがそれぞれはかせられた、白香お姉ちゃん用の輝くような純白のパンティーなのですから。
(もうすぐ、同じ目に遭わせてあげるよ、お姉ちゃん‥‥)
不思議なことに、袋越しに、それをモシャモシャ音を立てながら揉んでいると、体のなかに力が湧いてきて、ワクワクしてくるようでした。
(そしてこれを、はかせてあ・げ・る‥‥)
わたしは、あのねこみみ姿で片桐さんに何度か可愛がってもらっているのですが、その
と――。
わたしもきっとそうだったように、ビルの入口でボタンが押された音楽が鳴りました。
東島財団のお坊ちゃん、幸也が到着したようです‥‥。
片桐さんがわたしの計画に乗ってくれたのは、幸也の存在も大きかったようです。わたしは、そんなことは、全然考えていなかったのですが。
今日は、わたしも含めた三人での初顔合わせでもあるのですが、片桐さんは、幸也が来るなり、
「――話は聞きました。なるほど、白香クンですか‥‥。いや、坊ちゃんのためなら、わたしも一肌脱ぎましょう!」
と、わたしよりは幸也のほうを多く見て言っていました。そしてしまいには、幸也の両手を自分の両手で包み込んで、
「つきましては、研究費の増額の件、宜しくお伝え願いますっ‥‥! ――え? いえ、お爺様にそうおっしゃってくだされば、お話は通じるはずです。研究室の片桐が、そう申していたと‥‥。あ、この間お渡ししたかもしれませんが、どうぞこれを‥‥」
なんて言って、名刺を渡したりしていました。
幸也は、わかったようなわからないような顔でうなずいていましたが、素直にその名詞をポケットにしまっていました。わたしには関係のないことですが、これはラッキーなことでした。
(チャンスだ、これは――)
と。わくわくしました。幸運が、わたしに味方してくれているのです。
(せっかくくれたこのチャンス、逃してはいけないっ‥‥!)
さて、いつ、どうやってお姉ちゃんをオとすか、ですが‥‥。
わたしのときと同様、さいいん装置を使うつもりです。が、あの用心深い白香お姉ちゃんのこと、わたしと同じ手であのビルに誘い込めるとは、いくら楽天的なわたしでも思えません。
では、どうするかというと‥‥。
「それならね、いい手があるよ、桃香クン」