【花よりも花の如く】-3
パンツから太股にかけて、つぅっと、ぬるぬるとした液体が垂れたのが分かる。
「凄ぇ濡れてるな、愛花のココは」
お兄ちゃんの声を聞くまでもなく、あたしの体が、かーっと熱を持った。
恥ずかしい。
こんなことしてるのが。こんな、こんな事。こんな所で。こんな、朝の光の中で。
「あっ！」
お兄ちゃんの指が、あたしの茂みの中に沈み込んだ。くちゅっといやらしい音がする。
深い谷間の間を掻き分けるように、くちゅくちゅと音を立ててお兄ちゃんの指が擦り上げる。
あたしはその動きに、思わず前屈みに身を捩らせた。
「じっとしてろ」
途端に、お兄ちゃんから叱責される。
でも、そんなこと言ったって無理。もう、それでなくても膝がガクガクしてるのに。
これ以上されたら、あたし、立っていられなくって倒れちゃう。
「もう……、もうダメ……」
駄目になっちゃいそう。学校行かなきゃいけないのに。
あんまり降りていかなかったら、お母さんが様子を見に来ちゃうのに。
こんなとこ見つかったら、なに言われるか分かったもんじゃ無いって言うのに。
それなのに、お兄ちゃんの手の動きは激しさを増していって……。
「あっ！」
仰け反ったあたしの背中が、トイレのドアにぶつかった。
いつの間にか、あたしは背中をドアに預けて、お兄ちゃんの方に腰を突き出す恰好で立っていた。
より、お兄ちゃんが愛撫しやすいように、お兄ちゃんにあたしのアソコがよく見えるように……。
恥ずかしい。恥ずかしいけど、もう、そんなことどうでもいい。
「おっ、お兄ちゃん！……もう駄目、あたし、もう絶対、駄目！」
あたしの悲鳴にも似た声に、お兄ちゃんは乱暴に動かしていた手を止めた。
はぁ、はぁ、はぁ……嘘っ？！あっ、後、後ちょっとでイきそうだったのに……。
自分から止めさせたくせに、そんなことをちらっと頭の片隅に思ってしまった自分が恥ずかしい。
お兄ちゃんは、そんなあたしの心なんかお見通しのような顔して、荒い息を吐きながら立っているあたしを、ニヤニヤと笑いながら見上げたまま、トイレットペーパーを引き出して、あたしのアソコを擦り上げるように拭いてくれた。
「いやらしい」
お兄ちゃんが見せつけるようにして晒したトイレットペーパーは、あたしから溢れた粘液で、ぐっしょりと濡れていて、小窓から入ってくる朝の光を受けてキラキラしてる。
わざわざそんなの見せてくれなくていいのに……。
あたしが目を背けると、お兄ちゃんは、くすっと笑った。ううん、にやっとかしら。よく分からない。
お兄ちゃんの笑った顔、昔は凄く好きだったのに。今はもう、なんだか分からない。
お兄ちゃんの目を見るだけで、心臓がドキドキしてまともに直視できないくらいに、怖いんだもの。
お兄ちゃんは、それを便器の中に流すと、あたしのパンツを持ち上げて、ちゃんと履かせてくれた。
アソコは確かに綺麗になったけど、パンツはまだ湿っていて気持ち悪い。
それに、膝がガクガクして立っているのがやっと。今から満員電車に乗らなきゃいけないのに、大丈夫かしら、あたし。
「今日は早く帰って来い、愛花」
トイレの鍵を開けてくれながら、お兄ちゃんはあたしを、ぎゅっと抱きしめた。耳に掛かるお兄ちゃんの息がくすぐったい。
おにいちゃん……。
お兄ちゃんは怖いけど、でも、抱きしめられていると暖かい。あたしは、やっと、ほっと息をつくことが出来た気がした。
それなのに、お兄ちゃんはあたしの耳の中に、「じっくりと一晩中、この続きをしてやるからよ」って詰め込んだの。
その言葉に、心臓が震えてしまう。
思わず息を呑んだあたしに、お兄ちゃんが、にやって笑ったのが分かった。凄く、嫌な笑い。嫌って言うか、怖い笑いをしてるのよ、絶対、今。
「お兄ちゃん、あっ……」
背中に回された手が、スカートの上からあたしのお尻を持ち上げるようにして、ぎゅっと掴む。
そんなことされるだけで、敏感になっているあたしの体は、爪先から脳天まで痺れるほど感じてしまう。
「いいな、愛花」
「あっ、おにぃ、ちゃん……」
念を押すように囁くお兄ちゃんの言葉に答えられない。
だって、体中が性感帯になったみたいに恍惚としているあたしは、服の上から撫で回されているだけなのに、もう喘ぐことしか出来なくて、お兄ちゃんが乱暴にあたしを突き放してくれるのを待つしかなかったから……。