【花よりも花の如く】-14
あたしの好きな先輩。先輩もあたしのことを好きになってくれたの?
……でも、そんなこと、怖くて聞けない。
だって、きっと、絶対……そんなことじゃないんだろうと思うから。
先輩は、ただあたしのことを抱きたいだけなんだわ。お兄ちゃんみたいに。
お兄ちゃんも、きっと、ただあたしのことを抱きたいだけなんだわ。好きとか嫌いとかじゃなくて、ただ、抱きたいだけなのよ。
お兄ちゃんも、先輩も、あたしの気持ちなんか、何も考えて無いんだわ。
泣きたくなる。
あたしは、先輩が好きなのに。お兄ちゃんも……、
――お兄ちゃんも?
何?今、あたし何を言おうとしたの?
あたしのお兄ちゃんなのに。お兄ちゃんは、あたしのことを無茶苦茶にして、あたしを、こんないやらしい女にした張本人なのに。好きなわけ無いじゃない。
あの時から、あたしはお兄ちゃんなんか大嫌いになったんだから。あたし、お兄ちゃんになんか抱かれてたら、絶対駄目だって思う。絶対、倫理的に、道徳的に、世間一般的に、絶対!
先輩はあたしの返事を待ってるみたいに、あたしを見つめている。
あたしの好きな先輩の顔。あたし、先輩が好きよ。お兄ちゃんなんかよりも、先輩が好き。
だって、お兄ちゃんは、お兄ちゃんでしかないんだもん。お兄ちゃんに抱かれていて、良いわけがないんだもん。
だから、あたしはこくんと頷いてしまった。その途端、ぎゅっと先輩に抱き竦められる。
帰ったら、あたしはお兄ちゃんに抱かれるのに。先輩はそれを知らないから。
「先輩……」
大好きな先輩に抱かれているのに、『好き』と伝えることが出来ない。
こんなに近くにいるのに、裸の肌が触れ合っているのに、あたしは、お兄ちゃんのことを考えているから。
帰らなきゃ。お兄ちゃんが待ってるんだもの、あたしを抱くのを。……朝の、続きをするのを。
多分、お兄ちゃんは今夜あたしの部屋に来て、明日の朝まで、一晩中たっぷりと時間をかけて、何度も何度も、お兄ちゃんの気の済むまで色んなことして、あたしのことを無茶苦茶にして弄ぶんだわ。
体中嘗め回されて、酷いこととか言われて、恥ずかしいこととかされて、何も分からなくなるくらい、くたくたになるまで、色んなコトをされるのよ。
お兄ちゃんに……。
そんなことを考えたら、お兄ちゃんのことを思い出したら、たった今先輩に貫かれたばかりだというのに、あたしの体の奥が、ぽぉっと熱を持ったのが分かった。
あたし、やっぱりいやらしい。お兄ちゃんが言うように、淫乱なんだわ。
お兄ちゃんが、あたしを、そういう風にしたから……。
あたしは、お兄ちゃんの――
『妹』
……だから。
【FIN】