桃香語り(1)-3
――階段から降りた一階のフロアで止まりました。わたしは、彼がわたしの胸にちらちら目をやっているのを確認して、
「へえー、この胸、気になる?」
と、いつかの海田お兄ちゃんに言ったように、彼にかまをかけてみました。
「べ、別に気になってなんかないよ!」
幸也は面白いように、わかりやすい反発を示してきました。ぷくく。
わたしは自分のおっぱいをアピールしつつ――わたしではなく、おっぱいそのものへ彼の関心を誘導するようにして――こっちのペースに乗せたところで、彼に言いました。
「わたしのお姉ちゃん――白香お姉ちゃんの‥‥オッパイ調教をしてほしいんだ♡」
これを聞いた幸也は、眼鏡の目を丸くしていました。
「な、な‥‥。――なに、それ‥‥?」
予測できたことですが、幸也はへどもどして聞いてきました。わたしは、野暮な質問はやめてね、というように、しれっとして答えました。
「え? だから、そのまんまだよ。白香お姉ちゃんの、あの、爆乳の、調、教」
そして、言ってきそうな疑問を拒もうと、白香お姉ちゃんがたまにやる仕草を真似て、涼しく髪を払い、続けたのでした。
「
やってはみましたが、わたしの髪は短く、お姉ちゃんのようにさーっとは流れません。
ぱさ。そういう感じで、味気なく垂れただけでした。幸也は、
(この人、いったい何をしてるんだろ‥‥)
とでも言いたげな、疑問の表情でわたしを見ていました。