ロ-2
「だけど・・・」
「・・・・」
「弱っている女につけこむ程、野暮じゃない」
「・・・・」
「だから、安心しろ。ほら行くぞ」
やっと立ち上がった私を急かすように引っ張った。
「マスター、ありがとうございます」
そう言って頭を下げる私に
タバコを吸いながら手をひらひらさせた。
「またおいで」
マスターのその言葉に、阿部さんは
「ったく。こんな店でこんな時間に女の子1人で危ないだろうが」
と小声で悪態をついた。
マスターはその言葉に苦笑いした。
お店を出たところで阿部さんが「あ!」と思い出して
ドアにかかる札を『営業中』に戻した。
暗い関内の道を少し歩くと大通りに出て
「もう、少しだけど酒を飲んでたから車で来られなかった」
と阿部さんはタクシーを拾った。
行き先だけをぶっきらぼうに運転手さんに告げて
「疲れた」
と背もたれにドカッと身を任せる。
あっという間に着いたそこは、会社から2駅のところで
さすが経管。良い所に住んでるな。
なんて関心して。
マンションのエントランスに入る前にまた「あ!」と思い出したように
「パンツ買う?」
なんて恥ずかしい事を無神経に聞いてきた。
「買うならコンビニ寄るけど?」
視線の先には煌々と明かりのついたコンビニがあった。