白香語り(7)-4
彼と紅香との仲に、わたしは、不穏な匂いを嗅ぎつけていた。この間、紅香に罐入りのコーヒー豆を電話で頼み、片桐さんと入れ違いに彼を帰した、あの日の夜のことだ。
あの二人は、外で会っていたのだ。紅香がわたしに言った、雨に降られた日以後も。
(わたしに黙って‥‥)
『
紅香は、コーヒー豆はちゃんと買ってきた。それはいい。しかし――。
「紅香‥‥」
「え、なぁに?」
あの夜、片桐さんも帰り、わたしたちだけとなった際、さりげない風を装って聞いてみていた。正確には、桃香は先に寝て、わたしと紅香ふたりだけになった機会に。
「海田くん、最近どうしてる? 前の、『SHARKNADO』でイベントやってて入れなくて‥‥ていう日以降、会ってるの? わたしは、連絡取ってないんだけど‥‥」
わたしも寝る準備をしながら、あくまで、その場でふと思い出した、というように。――これに、紅香はこう言葉を濁した。一瞬、翳りは見せたものの、普通の表情で、
「さあ‥‥。わたしもあれから――‥‥会ってない、から‥‥」
と。
あのコはいけしゃあしゃあとわたしに嘘をついたのだった。この、わたしに。