白香語り(3)-3
幸也くんはというと、しどけない姿の桃香には(彼の位置からは、ミニスカのなかが見えたと思う)一瞥をくれただけで、装置のほうを眺め渡しはじめた。中心部分だけでなく、あちらこちらを注意深そうに。
(うーん。こちらも恐るべし、か‥‥)
わたしが腕組みして内心唸っていると、聞こえたわけでもないだろうが、男子にしては小柄な彼が、こっちを向いてわたしを見た。その眼鏡のレンズが緑色に光るのが見えた。反射防止のコーティングがしてあるやつだ。
その夜からわたしはさっそく、手に入れた桃香――獲物――にいろいろした。これからは主に片桐氏に「助手」役を勤めてもらうことになるが、最初はわたしたち姉妹だけで楽しみたかった。が。
「お、お姉ちゃん‥‥。桃香に優しくして‥‥」
わたしが桃香を懸架装置にかけて吊るすと、紅香が心配そうに言ってきた。見ると、自分のあごの前で手を組み合わせた、お祈りをするようなポーズだ。わたしはそのいい子ぶりに、ふん、と鼻を鳴らした。目の前には、吊るされた妹・桃香の裸身があった。わたしは、家に戻るとすぐ、桃香を懸架装置にかけていた。装置は、不具合等がないか、あらかじめ綿密に検査してある。天井の懸架装置本体、手枷とも、不具合はなかった。桃香は紅香と違い、合意の上で調教に入るわけじゃないから、催淫装置にかけた後、速やかに初期調教に入る必要があった。
紅香のときと同様、懸架といっても完全に空中に吊るし上げたわけではない。が、紅香のときと違い、桃香の足元には低い木の台を置いてあった。桃香の上背を考えて、こうしたのだ。後は同じく、桃香のニーソックスの足の前半部をその台に乗せ、両腕を頭上に上げた状態で保っていた。紅香同様、桃香の体重ならば完全に空中に吊るし上げることは可能だが、手械の部分に全体重がかかるそのやり方を、わたしはまた避けていた。
「お姉ちゃん、優しいでしょお?」
わたしは、手首の痛みを慮った自分のことをそう言ったが、桃香は、
「むにー、桃香、なんでも言うこと聞くのにぃ‥‥」
と、やはりしくしく泣き言を言うだけだった。紅香と違い、その被虐の美を感じさせるいやらしい仕草はしなかった。やはりコドモだ。