白香語り(3)-2
装置の作動音が、フロアに響いた。先の起動状態よりは大きいものの、くぐもった音だ。これなら、外部の人間に怪しまれることはまったくない。
桃香は、え?という顔になり、椅子から立ち上がろうとした。が、ふらふらとその場に倒れこんだ。催淫装置は三十秒ほど作動した後、やがてその音を小さくしていった。終了だ。わたしは、キャビネットから片桐さんやスタッフの人たちの仮眠用の小さな枕を取り出し、手に持った。
桃香は、可愛らしいその目を閉じてはいたが、意識は保ったままだった。
わたしは、妹を仰向けにして、頭に枕を当ててあげた。そして、小柄で華奢な割には形よく盛り上がった、弾力のある白ブラウスの胸を触った。
「あん‥‥♡」
たしか中身は、フリフリとリボン付きの、これは現代風のピンク色の可愛いブラのはずだ――わが妹ながら、なかなか艶っぽい嬌声が、その可愛い口から漏れ出た。普段はこうるさいが、こうしてしまえば桃香はじゅうぶん美少女であるし、この悪戯をわたしは、
(――楽しいかも‥‥)
とも感じた。背徳的な欲望に乗せられたわたしは、今度はミニスカをまくってみようと、その濃いスカイブルーの布地に手をかけるまでしたが――場を考え、やめることにした。
「成功です」
わたしは――己を抑えられるのが、わたしの美徳なのだ――片桐さんとスタッフの人たちに事務的にそう報告し、さらにスタッフの人のひとりに、幸也くんを呼んできてくださいと頼んだ。
「コウヤくん‥‥?」
スタッフの人の怪訝そうな声に、片桐さんが答えてくれた。実は、あのコも呼んでいたのだった。堕とす場面そのものは見せず、ボディガードの人たちと地下の駐車場で待ってもらっていた。
「
「あ‥‥」
わたしが桃香のカラダに触っていると、スタッフの人たちは、幸也くんを連れてきて、そして帰っていった。わたしとしては、目の前の桃香もだが、片桐さんの「坊ちゃん」という言い方が気にかかっていた。やっぱり、というべきか――そういう関係なのだ。彼はまだ桃香と同い年だというのに‥‥恐るべし、東島財団。