やはり・・・-1
千佳は倉田と一緒に島村のアパートへ。学生が住んでいるアパートなんて行った事のないない千佳にとってこの部屋の狭さは驚きのひと言だった。『息が詰まりそう・・リビングにベッド・・・このまま押し倒されたら・・』まさかの想像もしてしまう距離感であった。
3人でお茶をし、気まずい時間が流れようとしていた。周りには無造作に平積みされた本があちこちにあった。『本が好きなのね。ジャンルはどんなのかしら』と心の中で思った。すべてブックカバーが掛けており几帳面なのかずぼらなのかよく判らない《彼》であった。
「ちょっと本見せてね」
軽い気持ちで積まれた1冊を取りパラパラ捲った。慌ててキッチンから来る島村、手遅れであった。卑猥な言葉が描写されており、何処を読んでも『奥さん』『人妻』と言葉が乱れていた。
倉田は幾度も部屋に転がり込んでいるので驚きもせず、ペラペラ捲っては読み耽っていた。島村は千佳の前で膝をつき「あぁ・・・」とうなだれ「誰にも言わないで下さい」と懇願された。千佳は驚きのほうが大きく「言わないから・・・頭上げなさい」としか言えなかった。
「よく判らないけど・・・わかったから」千佳は訳の判らない答えをし思わず言ってしまった。
「お奨めの一冊貸してくれないかな。」
島村は目がテンになり、お気に入りの山から一冊を渡す。
「そのヤマがお気に入りなの?」千佳は島村に自然と問いかけた。島村はコクリと頷くのが精一杯だった。
「じゃぁ借りていくね。今日はご馳走様」と千佳は内容も確認せず帰ってしまった。