あなたは紅香と‥‥。(1)-2
――今日は、紅香との初デートの日だった。残念ながら、空はどんより曇っており、先刻からその度合いを増してきていた。
「海田くん、待った?」
はあはあと息を弾ませながら、目の前に来た紅香はあなたを少し見あげる。額にはうっすら汗が滲んでいる。そしてその清楚な、整った顔は、しかし、はっきりと上気していた。走ってきたからだろうか。
(拭いてあげようか‥‥)
あなたはそう自然に思いながらも、やはり自然に、
(胸はどうなってるんだろ‥‥)
とも思わざるを得なかった。
紅香くらいの巨乳だと、胸の、いわゆる谷間にも、汗が滲むのではないのだろうか。
(いや――)
あなたの脳裏に、紅香の裸体が鮮やかに甦った。この気温と湿気であれほどの巨乳になると、左右の乳房がこすれあって、蒸れるのではないだろうか‥‥。
「ふう、暑い‥‥。脱いでいい?」
そんなあなたの心中を知ってか知らずか、あなたに傘を持ってもらうと、その場でサマーセーターを脱ぎ、白いシャツ姿になったのだった。清楚な白布地の下、彼女の巨乳がその存在感を誇示するかのように、揺れた。
(う‥‥)
おっぱい星人のあなたは、もちろん気になった。
(いや、気にしない――気にしない‥‥!)
あなたはそう念じ、意識しないように努めた。
あなたたちは歩き出した。最初、紅香はサマーセーターは手に持っていたが、持ちにくそうだったので、あなたはそれを自分のスポーツバッグに入れてあげたのだった。
「うーん、雨になるのかな‥‥」
紅香が、心配そうに灰色の空を仰いだ。どんよりと曇った空は、さらにますます、雲の厚みが増してきていた。あなたは、傘を持ってきていなかった。紅香はそのことを、心配してくれていた。
今日のデートで、あなたと紅香は『SHARKNADO』に行く約束をしていた。女の子とのデートに慣れていないあなたは、緊張していた。どうすればいいのかわからなかったが、とりあえず、
(今日は、あの調教のときのことは、封印しておこう‥‥)
とは決めていた。そうしなければ、今日のデートを、デートとして楽しめないだろうと考えたのだ。
(あれはあれ。これはこれ。平常心を保てよ、俺‥‥)
そう、己に言い聞かせるあなただった。しかし‥‥。
(――とはいっても、邪念は襲ってくる‥‥)