紅香語り（５）-3
三種のブラ‥‥。
まず、オープンブラです。
鏡に映したとき、わたしの
変かもしれませんが、高級そうな刺繍の細い白布地さんに本来の役目を果たさせてあげられていないことに、本当に申し訳ないような心持ちになったほどです。それほど、わたしの、
（ち、ち、ちー‥‥。ちちに――‥‥）
――乳房は、そこでエッチなオーラを発していたのでした‥‥。
（そして、摩擦ブラ‥‥）
本屋さんで海田くんに遭遇したあの日、わたしはさすがに耐え切れず、
「お姉ちゃん、許して‥‥」
とお姉ちゃんに半泣きで訴えました。このオープンブラを外させて、と。わたしは、
（駄目で元々‥‥）
くらいの気持ちで言ってみたのですが、お姉ちゃんは意外にも、ふんふんと小さくうなずいて承諾してくれました。が、その直後ににんまりと笑って、今度は摩擦ブラを持ち出してきたのでした。
オープンブラとは正反対の、黒くてなんだかごわごわしているそのブラに、わたしは最初は喜びました。だって、オープンブラは、精緻に刺繍されたそのデザインこそ美しいものでしたが、「ブラジャー」というにはあまりにも頼りないものでしたから。
（これは、とにかく「ブラジャー」だから‥‥）
と。でも――。
摩擦ブラは、その名のとおり、敏感なおっぱいの肌に触れるカップの内側部分に、性的な摩擦を与える特別な繊維を配置した、ブラジャーです。女体を日常的に責める調教用具‥‥。
日常的――お姉ちゃんは「恒常的」という言い方をしていました。お姉ちゃん曰く、
「ちゃんと計算して作ってあるのよ。片桐さんとスタッフの人たちが、あそこで二年もかけて」
という、特殊なものだったのです。あそことは、この場合、あの研究室のことです。こんな代物を二年も研究して作るなんて、いったいどんな研究所なのでしょう。悩んでしまいます‥‥。
（うー‥‥――あ、いや‥‥）
思いをめぐらせているうちに、わたしは、自分がいやらしい気持ちになっていることに気がつきました。
（あ、あ、あ‥‥負けそう‥‥。おっぱい――あんっ‥‥）
わたしが与えられる刺激に負けまいと身をよじるたびに、胸のブラはよりいっそう、快楽の刺激をわたしの両の
摩擦ブラは、こういうものなのです。そういう設計がなされているものなのだそうです。
「内側のカップとおっぱいの間に微妙な――本当に微妙な空間が計算されて作ってあって、それがカラダの動きによってどう擦れるかを、厳密に計算してあるのよ。凄いでしょ♡」
お姉ちゃんはにやにや笑ってそんな説明をしました。
（うわあ‥‥）
チクチクとポツポツ。その感触の中間。そう表現すれば、適当でしょうか‥‥。お姉ちゃんの手で装着されたとき、わたしがいままでの味わったことのない特異な快感が、敏感な乳肌に加わったものでした。