紅香語り(3)-3
それはそれとして――。
白香お姉ちゃんは、なんだかんだ言ってやっぱり、長女としてそんな桃香のことを考えてくれていたのでした。わたしはホッとする思いで、少しのあいだ話し合ったのでした。が、お姉ちゃんがさらに、ふう、と息をつきながら言うには、学力的にはともかく、時間的に、
「もう、わたしがやることはできないな‥‥」
ということでした。そして、わたしが、
(それなら、どうしようか‥‥)
と悩みかけたとき、お姉ちゃんは、
「いずれはちゃんとした家庭教師を呼ぶとしてさ、紅香、それまでやってくれない?」
と振ってきて、わたしを驚かせたのでした。
「えっ、わたしが? うーん‥‥。できるかな‥‥」
わたしは言いよどみました。
(たしかにお姉ちゃんと違って、時間はあるけど‥‥)
わたしはそう迷ったのですが、迷いながらも結局、承諾しました。まだ桃香の意志も確認しておらず、その場では、どこからどうやって人を選ぶかといった具体的なことも決められませんでした。さしあたり、わたしが、特に不安な漢字の書きとりを試しに監督する、ということになったのでした。
なったのでしたが――。
あのコは、書きとりそれ自体には、素直に応じました。が、食卓でわたしが漢字の問題集に目を落としていて、ふと目をあげると、じーっ、というように、わたしに視線を向けているのです。わたしの顔ではなく、手元の辺りを。
いえ、わたしの手元の問題集のわたしの採点が気にかかるというなら、普通なのですが――どう見ても、わたしのおっぱいに熱視線を注いでいるようにしか、見えないのです‥‥。
「桃香――」
わたしがたしなめると、にこにことした邪気の無い笑顔を返してくるのですが――たしかにお姉ちゃんならずとも、わたしも心配になりました。このコの将来が。
(‥‥‥‥)
そしてまた――。桃香も桃香ですが、白香お姉ちゃんもまた、こういう話の一方で、また怪しいたくらみを押し進めているようなのです。純白パンティー。あれです‥‥。
このあいだわたしは、この純白を、
「調教終了の印、証よ」
と宣言する白香お姉ちゃんから受け取り、赤くなりながらはいたのですが――。
ぱちぱちぱちぱち‥‥
何が面白いのか、桃香は拍手していたのでした。つぶらな瞳をきらきらさせて、好奇心いっぱいの顔で‥‥。普通ではありませんが、それはまあ、敢えてよしとしましょう。問題はそこではなく――桃香はわかっていない、いえ、気がついてないと思うのです。
パンティーは、あの純白のパンティーは、わたし用だけではないことに。
お姉ちゃんは、桃香用のも、購入したのです‥‥。