紅香語り(2)-1
わたしは、お洗濯物を取り込むことにして、Tシャツを着て、その上にお気に入りの薔薇の花柄のフリルエプロンをつけ、ベランダへと出ました。
五月ですし、肌寒くはありませんでしたが、さわやかとも言い難い湿った空気が、頬を撫でました。いつもと変わらない車の音、そして公園でサッカーのようなことをして遊ぶ子どもたちの元気な歓声が、ずっと下のほうから聞こえてきました。見下ろすと、どうやら子どもたちは、天気を見て、その遊びをやめることにしたようです。豆粒のようなその姿が、素早く動くことをやめ、一箇所に集まってゆきました。
平穏な、日常の景色です。――いったい誰が想像するでしょう。こんな当たり前のような風景のなか、高層マンションとはいえ、街の一画、閉ざされた家のなかで、巨乳の女子校生たちが、変態的な女体調教に興じているなんて‥‥。
(それも、姉妹で‥‥)
わたしはそう考えただけで羞ずかしくなり、顔を赤らめました。赤らめながら、お洗濯物を取り込みはじめました。
女子校生たち。
そうです。白香お姉ちゃん言うところの、わたしたち蒲生三姉妹の調教プログラムは、これもお姉ちゃんの表現では、「第二段階」に入りつつあったのです。
わたしの将来の夢は、「お花屋さん」です。
フラワーショップというより、街の人に愛される「お花屋さん」になりたいと思っているのです。が‥‥このことで、
「わかる? このニュアンスの違い?」
と妹に言うと、桃香は、
「わからないよぉ」
と返してくるし、お姉ちゃんに言ったら、夢それ自体を笑われてしまいました‥‥。
もっとも、桃香に関しては、「ニュアンス」という言葉自体がわからなかったと、最近になって知りました。この間、ねこみみ姿のあのコに、強引にベッドに連れ込まれたときに‥‥。
(うー‥‥)
あのときの感触を思い出し、わたしはエプロンの胸を押さえました。
むにゅ。