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名曲はプラネタリウムの背景音楽で学んだ
【エッセイ/詩 その他小説】

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その一曲を求めて-1

 平成と言う時代の大きな出来事の中に、平成24年5月21日の金環日食がある。
 自分の家の窓から、細い光にふちどられた「黒い太陽」を見た記憶は 今も鮮やかに心に浮かんでくる。

 その日食をナマで見た時に、自分の頭の中にずっと管弦楽曲が繰り返し響いていた。
 シベリウスの交響詩『フィンランディア』だ。
 この曲が自分の頭の中で日食と結びついたのは、明石のプラネタリウムで小学生時代に見た、日食の場面の背景音楽……BGMとして使われていたからだ。

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 小さいころから、自分はクラシック音楽が好きだった。
 持ち運べるレコードプレーヤーに、ペラペラのすきとおった「ソノシート」をのせてクラシックの名曲の小品を聴いていた。

 小さな自分にとってクラシック音楽は「身近な」存在だった。
 明石公園の大きな池に、白鳥が浮かんでいるのを見ると、
 「あ、チャイコフスキーは この白鳥を見て『白鳥の湖』を作ったんだな」と思うし、
 夜になって親と銭湯に行った帰りに、瓦屋根の向こうに月が輝いているのを見ると、
 「あ、ドビュッシーは このあたりで月を見て『月の光』を作ったんだな」なんて考えてたし、
 神戸の街の古いビルに夕陽が当たっているのを見ると、
 「あ、ハイドンはここへ来て『セレナード』を作ったんだな」なんて言ったりしてた。
 「セレナード」については、ソノシートについてた 曲の解説書のイラストが影響したのかも知れない。
 古い洋風の建物が、自分にとって「セレナード」だった。

 しかし自分が大好きだった曲は、ハチャトゥリャンの『剣の舞』だった。
 自分の出ばやしだった。
 親がいない時には、「33回転」のソノシートを、「78回転」で再生して、凄まじく激しいリズムに酔いしれてたんだ。
 小学生になってわかることだけど、自分が聴いてたクラシック音楽の作曲家で当時「現役」だったのはハチャトゥリャンだけだったんだな。

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