その一曲を求めて-2
小学四年生になって、初めて明石のプラネタリウムで星に魅せられ、同時にプラネタリウムの投影の背景に流れるクラシック音楽に魅せられていった。
自分はクラシック音楽が好きだったのに、クラシック音楽についてメチャ無知だった。
プラネタリウムで太陽が沈み、夕焼けの中に少しずつ星が現れてくる場面に流れる音楽……(ええ音楽やなぁ)と思って聴いてると、後ろから小さな声が聞こえてきた。
「ママ、これドボルザークの『新世界より』の曲やね」
(ドボルザークって、なんやねん……)それくらい、何も知らなかった。
プラネタリウムで投影の話題が変わると、夕暮れの音楽などが変わる。それらはたいてい未知のクラシック音楽だった。
はじめからわかったのは、夜明けの音楽に使われてたグリーグの(ペール・ギュントの)『朝』ぐらいだった。
FMラジオなどを聴いてて、何かのおりにふと『プラネタリウムで聴いたあの曲』に出会う。
「ははーん、前に夕暮れの時に流れていたのは、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲の第二楽章だったのか」
「ほほぉ、こないだ夜明けの時に流れていたのは、マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲』っていうのか」
「ふふーん、最近宇宙旅行へ出発するときに流れているのはショパンの『幻想即興曲』なんやな」
……などなど。
もっとも、プラネタリウムの解説をするひとが曲名を教えてくださる事もあった。
「南極の星空」の話題だった時、冒頭の解説に「ただいま流れております曲は『南極』という曲です」と言う感じで。
ただ その曲、ヴォーン・ウィリアムズの『南極交響曲』の第二楽章を実際にレコードを手にして聴いたのは十数年も経ってからなんだな……
シベリウスの『フィンランディア』も、プラネタリウムで聴いてから 曲名を知らないまま何年も過ぎたある日、
テレビのワイドショーで「名曲喫茶で曲に合わせて指揮をする『クラシックおじさん』」を紹介する時、おじさんが指揮してたのが『フィンランディア』と字幕で出たんだ。
「おお、これはあの『日食の場面』の音楽ではないか」とレコード店に走ってみたら、自分が思ってたよりずっと広く知られた曲だった。
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