『北鎌倉の夏〜後編〜』-4
何よりそこに、久人がいない事。
またあの日常に戻らなければいけないなんて。
友達と遊んでも、何かが違うと思ってた。
都合の良い付き合いで、本音を隠した上っ面で接してくる友達。
涙が頬を流れた。
拭った跡が少し涼しい。
「よしよし…。」
ポン…と頭に広い手が置かれた。
あたしは、夕方になっても泣いていた。
「絶対、絶対来るからっ、受験終わったら…必ず…!!」
うん、うんとただ相槌を打つ久人の優しい顔が、涙で滲む。
好き、とは言わない。
言えない。
今はただ、こう約束する事しかできない。
春になったら、会いに行く。
その時は、あたしの気持ちも伝える。
「ずっと毎日、昼からどこか行ってたみたいだけど…来て良かったみたいね、瑞穂ちゃん。」
「…うん。」
バイバイ、お祖母ちゃん。
バイバイ、久人。
あたしはもっと大人になって、戻ってくるよ。
北鎌倉の春に…。
だからその時は、あなたの気持ちも教えてね久人…。