あなたは平凡な男子校生。（４）-1
蒲生紅香が姉妹とだけで住むというマンションは、いわゆるタワーマンションだった。この間、白香は教えてくれなかったが、乗り換え駅からもその姿を認めることができた。
姉妹とだけで、といっても、ふたりきりではなかった。電話で、最初そこの部分だけ聞いたあなたは当然のように、白香があの紅香とふたりだけで住んでいると思ったのだが、しばらくして、話の噛み合わなさを覚え、問い質した。
すると白香は、紅香の下にさらにもうひとり、「桃香」という妹がいるということを言ってきた。さも当然のように言うので、あなたも突っ込む気を無くしたのだった。
つまり彼女らは、蒲生白香・蒲生紅香・蒲生桃香という――。
「そう、三姉妹ってことになるわね」
そのとき、電話先の彼女はあっけらかんと言った。
「爆乳三姉妹、なんて言う人もいるわよ♡」
歩いてゆくと、近くには樹木に囲まれた公園があり、子どもたちがサッカーのようなことをして遊んでいた。その平和な光景を横目で見つつ、また教えられたその高層タワーマンションの威容に目を見張りながら、あなたはのどかな住宅街を入口に向かっていった。少し離れた見えない場所に交差点もあるらしく、数台の車がいっせいに走り出す音やクラクションを鳴らす音が、何度か聞こえてきていた。
そう、あなたは蒲生白香の誘いに乗ったのだ。翌日電話し、その場は一旦保留ということにし、さらに二日間悩んだが、
（ともかく、お試しでやってみよう‥‥）
という考えの元に、蒲生紅香の「おっぱい調教」というのを手伝うことにしたのだった。
マンションの一階のフロアの透明な自動ドアを通ると、またフロアがあり、そのスペースの少し小さい同じような透明の自動ドアの前で、あなたはインターホンの教えられた部屋番号のボタンを押していった。
（本当に出るんだろうか。かつがれてるんじゃないだろうか‥‥）
あなたはまだ、自分に与えられた仕事が、信じられないでいた。
（だって、あんな清楚なコの、調教なんて――。住所も嘘だったりとか‥‥）
だが、少なくとも後のほうの交錯は、すぐに消し飛ぶことになった。最後に通話のボタンを押すと、あっさりと蒲生白香が出たのだ。
「あ、はぁーい。待ってたわ」
インターホンのカメラの前によく見えるように立ったあなたの耳に、蒲生白香の朗らかな声が聞こえてきた。
「紅香、いるわよ」
意味ありげな声音で、蒲生白香が言う。
「桃香も――妹の‥‥あ、言ったっけ？――い・っ・しょ♡」